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トシサダ戦国浪漫奇譚
第一章 天下統一編
第十二話 覚悟
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に向けると石田三成が立っていた。

「お前は本当の阿呆だな」
「石田治部少輔様!?」

 どうして石田三成がここに居るんだ。人払いをしたはずだろ。石田三成は何時も通り上から目線で俺のことを見ていたが俺から視線を逸らした。俺も自分が阿呆だと思っている。ここで死ぬ気で頑張る以外に俺に道はない。このままでは俺は間違いなく破産する。引くも地獄、進む地獄。どちらも地獄なら進む以外に俺に活路を開く手段はない。

「三成でよい」

 俺は石田三成の言葉に耳を疑った。石田三成は何を言っているんだ。お前を何で俺が三成と呼ばないといけない。

「今何と言われたのです?」

 俺は石田三成の言っている意味が理解できず聞き返した。

「三成と呼べと言ったのだ」

 石田三成はぶっきらぼうに俺に声をかけた。

「三成様はいつから聞いていたのですか?」

 俺は戸惑いながらも石田三成のことを三成と呼んだ。流石に上司だから呼び捨てにはしなかった。

「最初からだ」
「お前の身代で五百の兵を抱えるの大変だったはずだ。その様子ではお前の自由にできる金などないだろう。どうしてそんな真似をした。私が渡した軍役帳通りに準備を整えておけばいいものを」

 石田三成は呆れた様子で俺に言った。

「知行は関白殿下からいただいたものです。受けた御恩に報いる時は今だと思いました。使い時を逸しては意味がありません」

 俺は本心を隠し忠勤を励もうという若武者を演じた。本当のことを言うと小言を言われる気がしたからだ。
 北条征伐で手柄を上げないと領地を加増してもらえる機会は今後ないと思っている。それに俺の所領で仕官を待っている者達をあまり待たせることは出来ない。俺は背伸びをするのは嫌いだ。だが、今が頑張りどきだと思っている。

「藤四朗、見直したぞ!」

 石田三成はいきなり大きな声を上げた。俺は驚き石田三成の行動に戸惑った。俺の言葉は石田三成の琴線に触れたようだ。石田三成は勢いよく近づいてくると俺の目の前に座り俺の肩をつかんで真剣な顔で俺のことを見ていた。
 いつになく感情的な石田三成だった。

「私はお前がそう言う男だと思っていたぞ! 私にできることがあれば言ってくれ!」

 石田三成はいつも冷徹な雰囲気と違い熱く俺に語ってきた。何なんだ。別人のような石田三成に俺は終始戸惑った。



 俺は秀吉から受け取った、俺に伊豆国を与えると書かれた、知行安堵状を胸にしまい陣屋に戻った。俺が陣屋に到着した頃は既に辺りは暗くなっていた。その俺の帰りを入り口の辺りで待っている者達がいた。藤林正保、岩室坊勢祐、曽根昌世の三人だった。三人は俺の姿を確認すると俺に駆け寄ってきた。
 これからどう説明しようかと思案した。
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