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トシサダ戦国浪漫奇譚
第一章 天下統一編
第十二話 覚悟
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しても上手くいく訳がない。江川英吉の息子である江川英長だからこそ上手くいったのだ。この二人の連携を完全に遮断すれば、江川英吉は焦りを感じるに違いない。俺の着眼点は間違っていないはずだ。
 俺の作戦に自信はある。だが、自分の命がかかると実感すると二の足を踏んでしまう自分がいる。

「卯之助、黙っていてはわからんぞ。はっきり答えよ」

 秀吉は返事を催促してきた。これ以上だんまりし続けるのは無理だ。俺から申し出た以上ちゃんと返事をしないといけない。
 俺は死にたくない。
 死にたくない。
 ふと俺の頭の中に家臣達のことが思い浮かんだ。俺の家臣達も死にたく無いはずだ。だが、みんなそれぞれの事情で戦場に出る。俺も戦場に出れば死ぬかもしれない。
 俺は途端に恐ろしくなり呼吸が苦しくなった。

「卯之助、さっさと答えよ!」

 秀吉が俺を怒鳴りつけた。それで俺は現実に引き戻された。
 俺は引き下がれない。
 伊豆国だけじゃ家臣達を養えない。藤林正保と曽根昌世は俺に無理をするなと言ってくれた。だが、ここが俺にとって一世一代の勝負どころだ。家臣達はやる気十分だ。そして、俺は韮山城を落とす自信がある。俺は自らの胸を強く叩きむせびながら呼吸を整えた。
 俺が単独で率いる兵数は五百だ。与力の兵力をあわせれば五百二十くらいか。津田宗恩が連れてきた者達もお家再興のために俺の元にいる。彼らも後がない。俺も家臣達もこの戦にかけている。

「関白殿下、その条件を飲ませていただきます」

 秀吉はしばらく俺の顔を凝視していた。

「本当に良いのだな?」

 秀吉は峻厳な態度で聞き返してきた。

「はい!」

 俺は躊躇なくはっきりと答えた。

「後で寧々に泣きついても儂は許さんぞ。これは主従の間の取り決めと心得えろ。失敗すれば潔く腹を切れ。腹を切らねば儂が手打ちにしてくれる」

 秀吉の雰囲気は今までとは違った。情け容赦ない武士の顔がそこにあった。俺は韮山城攻めで秀吉の出した条件を一つでも失敗すれば死ぬことになると直感した。
 俺は震えそうになる手を片手で押さえつけ気を張る。そして、秀吉に対して手を畳に付け頭を下げた。俺が立身する機会は北条征伐以外にない。それに俺は一人じゃない。頼りになる家臣がいる。俺は家臣達と力を合わせて立身してやる。

「承知いたしました。小出相模守俊定、心を引き締め韮山城攻めにあたります」

 俺は顔を上げ秀吉の顔を見た。

「生意気なことを申しおって。だが、良い顔をしおる」

 秀吉は俺を見据えて口角を上げ俺を見ていた。彼の瞳は言葉と裏腹に愉快そうだった。

「朱印状を書いてやろう。そこに待っておれ」

 秀吉は席を立ち部屋を出て行った。すると背後に気配を感じた。俺は視線を後ろ
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