第一章 天下統一編
第十二話 覚悟
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中で侍烏帽子を被らせ木っ端侍の様に扱った。あやつはどうしたと思う」
俺は秀吉に話を振られた。そこまで虚仮にされたら普通は頭に来るだろう。だが、頭に来てもそれを表に出すことは流石に無いだろう。
「感情的になって関白殿下に対して粗相をしでかすことは無かったと思います」
秀吉は俺の言葉に深く頷いた。秀吉の心証を害しても北条にとっては一門の得もない。
「あやつは激情に流されることなく役目を全うしおった。さぞ屈辱的だったじゃろうがそれをおくびに出さなかった。北条家中の中で一番警戒すべきは北条氏規だ。卯之助、ゆめゆめ油断するでないぞ」
秀吉は厳しい表情で俺のことを見た。北条氏規は俺の想像している以上に精神的に強い人物のようだ。追い込まれても冷静さは失いそうにないな。だが、その性格なら敗色が濃厚になろうと安易に死を選ぶことはしないだろう。ぎりぎりまで生き残るために知恵を振り絞るはずだし、状況次第では降伏交渉もできるはずだ。俺に降伏することが北条家のためと思わせればいいはずだ。
「関白殿下にお頼みしたいことがあります」
「韮山城攻めのことか。ワシは韮山城をお前と同じく無理して落とす必要はないと考えている。織田信雄が失態をさらせば、やつを総大将から解任するつもりだ」
秀吉は淡々と話した。秀吉は織田信雄を失脚させることができれば御の字のようだ。織田信雄を徳川領に飛ばす口実作りの材料にするために韮山城を攻めようとしているのか。
確かに韮山城は戦略上確実に攻め落とさなければいけないほど重要な城じゃない。だが、攻め落とす意義は十分にある。時間をかけてまで落とす必要がある城じゃないということだろう。
俺は拍子抜けするが、秀吉は先ほどと同じく期待するような目で俺を見ていた。攻め落とす必要ないと先程言いましたよね。
これは韮山城を落とせということなのだろうか。俺は自問した。
「関白殿下、私に韮山城を攻め落とす妙案がございます。そのため軍配をお預けいただけませんでしょうか?」
俺は秀吉の期待の視線から目を逸らすことができず、秀吉に自ら韮山城を攻める総大将役を任せて欲しいと頼んだ。俺のような小身が総大将役を任される訳がない。秀吉だって阿呆じゃない。それなのに俺への真意が読み取れない。
「お前に従う武将がいるかな」
秀吉は短く答えた。なら、どうして俺に期待した視線を送るんだ。俺は毒突きながら秀吉の真意が何なのか考えた。しかし、何も思いつかなかった。
「だが。儂は織田信雄を総大将から解任し、韮山城を包囲する付城を作るように武将達に命じるつもりでいる。織田信雄、蒲生氏郷、細川忠興は小田原に呼びつける。その後はお前が勝手をする分には何も問わん。他の武将を味方に引き入れるもよし、単独でもよし好きにするがいい
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