第一章 天下統一編
第十二話 覚悟
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ために少しでも報いてやりたい。だから頑張っているんだ。そして、そのためには領地がいるし金がいる。
「長門守殿。内匠助殿。殿もしっかりとお考えの上で行動されていると思います」
岩室坊勢祐が俺を擁護してきた。藤林正保と曽根昌世の気持ちも俺はよく分かっている。だが、ここが頑張りどころなのだ。
「私達は殿を信じていないなど言っていない。関白殿下は感情的になられることがあるから殿の身を案じているだけだ!」
藤林正保と曽根昌世は岩室坊勢祐の口振りが癇に障ったのか急に怒りだした。
「殿は関白殿下の甥子で、関白殿下は殿を気に入れられているようですし、俺達よりよっぽど関白殿下をよく知っているはずです。殿にお任せしておけば万事上手くいきますよ」
岩室坊勢祐は落ち着き払って笑みを浮かべた。藤林正保と曽根昌世も岩室坊勢祐の話を聞き終わると思案し「そうだな」と口を揃えてつぶやいた。
「殿、ご無理をなされないようにお願いします。私達は微力ながら殿をお支えする覚悟でございます。関白殿下への相談の件はよろしくお願いいたします」
家老達は揃って俺に頭を下げた。家老達の言葉に俺は心を熱くした。俺は良い家臣に恵まれた。伊豆国の知行安堵状を手に入れて見せるぞ。俺は心に強く誓うのだった。
「任せてくれ。行ってくる」
俺は家老達に見送られ秀吉がいるだろう陣屋に向かった。秀吉の陣屋は俺と違い長久保城だ。俺は長久保城に到着すると小姓に秀吉に取次を頼んだ。だが、俺は待たされることなく秀吉のいる部屋に直ぐに通された。
部屋には秀吉と薄着の女が三人いた。俺は目のやり場に困り視線を泳がしていると秀吉が大笑いした。
「切れ者の卯之助もやはり未だ子供であるな」
軍議が終わって直ぐに女遊びをするお前には呆れるよ。俺は心の中でぼやきながらその場に平伏した。
「恐れ入ります。関白殿下、込み入った話があります。お人払いをお願いできませんでしょうか?」
「お前達しばらく場を外せ」
俺が秀吉に話を切り出すと先ほどまで緩い空気だったが急に張り詰めた空気に変わった。女達が立ち去る足音が消えると俺は体勢を起し話を再開した。
俺は秀吉に徳川家康が伊豆国を調略し国人を味方につけていることと、このままだと北条征伐後に伊豆国が親徳川になり豊臣家にとって懸念材料となると報告した。勿論、徳川家康と北条氏規の元に江川氏の嫡子と当主がそれぞれ仕えていることも説明した。
秀吉は俺の報告を黙って聞いていた。途中から秀吉は扇子を開いたり閉じたりする動作を途切れなく続けだした。
「驚くほどのことではないな。家康ならそれくらいのことを事前にやっているであろう。だから、儂は秀次の下に家康をつけたのだ」
秀吉は驚く様子はなく淡々と答えた。
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