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おぢばにおかえり
第三十八話 夏になってその十八

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「絶対にトップですよ、先輩声も可愛いですから」
「声も?」
「はい、そちらも」
 声のことまで言ってきました。
「奇麗ですから」
「ううん、そうかしら」
「一度ネットで歌とか発表してみたらどうですか?」
「今は無理よ」
 寮にいたら絶対にです、今時珍しい位に学生寮になっている寮だと言われています。
「それに私そんなことはね」
「お嫌ですか」
「ちょっとね」
「恥ずかしいですか」
「カラオケなら別だけれど」
 そういえば高校に入ってからカラオケも高校に入学してから行ってないです、駅前にカラオケボックスはありますが。
「それでもね」
「ネットでは、ですか」
「歌うのに勇気が必要じゃないの?」
「あれっ、顔出しじゃなくてもいいですよ」
「そうなの?」
「はい、全然」
 こう私に言いました。
「アニソン歌手でもお顔出してない人いますし」
「アニソンってアニメの主題歌とかの」
「そうです、ですから」
「まあお顔出さないのなら」
 それならです、私も。
「やってみようかしら」
「先輩お声も抜群ですから」
 だからというのです。
「きっとトップアイドルになりますよ」
「またそんなこと言って」
「嘘じゃないですよ」
 阿波野君の返事は真剣そのものでした。
「それは」
「またそんなこと言って」
「僕はそう思ってますよ」
「冗談じゃないっていうのね」
「これいつも言ってますよ」
「私が何でなのよ」
 何か自分でも憮然としてお顔が赤くなっているのがわかりました。
「アイドルとか歌手とかになるのよ」
「声優さんとか」
「そんなのなれる筈ないじゃない」
「じゃあ僕一人で思ってますね」
「何か変な思い込みね」
「まあまあ」
「まあまあじゃないわよ、阿波野君だけが思うにしても」
 それでもでした。
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