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真田十勇士
巻ノ七十七 七将その六

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「わかるな」
「はい、上杉家の気持ちは越後にありますな」
「どうしてもな」
「越後に戻られたいですか」
「そう考えておられるであろう」
 石高の問題ではないというのだ。
「やはりな」
「では」
「何かと動かれるやも知れぬ」
 越後に戻る為にというのだ。
「それがどうなるかじゃ」
「徳川家に目をつけられ」
「悶着があるやもな」
「そうなれば」
「そこから天下は動くやもな」 
 これが昌幸の見立てだった。
「戦にな」
「そうですか」
「今内府殿は大名を取り込み続け五大老の家にも仕掛けておられる」
「前田家を服属させ宇喜多家にも」
「毛利家にでもあろうし」
「そして上杉家にも」
「その時にどうなるかじゃ」
 家康が上杉家に仕掛けたその時にというのだ。
「戦になるやもな」
「ではその時に」
「わしも手を討とう」
 昌幸はこう信之に言った、既に彼はその頭の中であらゆることを考えて打つ手も決めようとしていた。だがそれはまだ表には出ていなかった。
 そしてだ、天下はその間にも動き。
 宇喜多家のお家騒動は遂に一触即発の状況になった、大谷はこれを見てだった。
 彼と親しい徳川四天王の一人榊原康政のところに言ってだ、こう頼み込んだ。
「それがしに力添えをお願いしたいですが」
「宇喜多家のお家騒動のことで」
「はい、あのままいけば」
「ですな」
 榊原もしの武士然とした濃い顔で応えた。
「あのままではです」
「危ういですな」
「そう思いまする」
 こう大谷に答えた。
「戦になりかねませぬ」
「ですから今のうちに」
「二人で、ですな」
「宇喜多殿をお助けして」
 そしてというのだ。
「お家騒動を収めましょう」
「それでは」
 榊原は快諾で応えた、そしてだった。
 二人は宇喜多家の家臣団の間に入り仲裁をはじめた。どちらにも公平に。だがそれが上手いくと思われた時に。
 急にだ、榊原は大谷に申し訳のない顔でこう言ったのだった。
「刑部殿、済まぬがそれがしは」
「これ以上このことには」
「動けなくなり申した」
 こう言うのだった。
「残念なことに」
「というと」
「殿が」
「内府殿がですか」
「はい」
 まさにというのだ。
「それがしについて周りの者に言ったとか」
「何を言っているのかと」
「はい、そうです」
「だからですか」
「それがしは」
 大谷にまた申し訳ない顔で言った。
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