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真田十勇士
巻ノ七十七 七将その五

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「時と場所、相手も構わず何でも言うからにはな」
「それが為にこうなった」
「家が二つに分かれた」
「間に立てる者もおらぬしな」
「大納言様がおられれば」
 秀長、彼がというのだ。
「違ったが」
「あの方がおられたなら」
「唐入りも利休殿、関白様のこともなく」
「豊臣家もですな」
「安泰であった」
 今の様な状況でもというのだ。
「実にな」
「そうなっていましたか」
「間違いなくな」
 こうまで言うのだった。
「そうなっておったが」
「しかしですな」
「その大納言様がおられぬ」
「だから最早ですか」
「豊臣家の天下は危うい、しかしな」
「しかしですか」
「時の流れは何時どう転ぶかわからぬ」
 そうしたものでもあるというのだ。
「急に流れが変わったりするのう」
「はい、織田家にしましても」
「元の右府殿はあのままいくとな」
「天下人でしたが」
「しかし本能寺で横死された」
 明智光秀に襲われてだ、そして織田家はそこから何でもない家にまでなってしまった。天下なぞ夢のまた夢の。
「そうしたこともある」
「だからですか」
「流れはどうなるかわからぬ」
「それでは」
「流れが徳川家にあってもじゃ」
 それでもというのだ。
「何時どうなるかわからぬもの、覚えておくのじゃ」
「わかり申した」
 信之は父のその言葉に頷いた。
「さすれば」
「その様にな、だから豊臣家もじゃ」
「まだ、ですか」
「天下人のままいるやも知れぬ」
「左様ですか」
「そしてその場合の手も打つ」
 昌幸は袖の中で腕を組んだ姿勢で信之に述べた。
「わしはな」
「そうされますか」
「その様にな、まあ見ておれ」
「これからですか」
「手を打つ、そしてな」
 そのうえでというのだ。
「真田家は生き残る、何としてもな」
「天下がどうなろうとも」
「そうしていく、それでじゃが」
 また話した昌幸だった。
「天下は近いうちに戦になるやもな」
「内府殿が天下を目指され」
「それに治部殿が反発されてな」
「そうなりますか」
「そして上杉家じゃが」
 この家のこともだ、昌幸は話した。
「会津への転封が決まったな」
「はい」
「そして今移っておられるが」
 上杉家は元は長尾家といい謙信が関東管領の上杉家の養子に入ったことから上杉の姓となった。元は越後の国人であったのだ。それが会津にというのだ。
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