巻ノ七十七 七将その四
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「このことは確かじゃ」
「左様ですな」
「あの方は決して悪い方ではありませぬ」
「むしろ私も裏表もなくです」
「信義に篤い方です」
「しかし平壊者であるが為にじゃ」
石田はこの気質が厄介だというのだ。
「内府殿にも言って場を壊し尾張派の方々ともな」
「揉めてですな」
「家を分けてしまっている」
「そうなっているのですな」
「そうじゃ、あの御仁の為にな」
幸村は残念な顔で述べた。
「そうなっておる」
「こうした時こそ一つにまとまるべきですが」
「茶々様に静かにして頂く為にも」
「しかしそうもなっていない」
「このことも厄介ですな」
「近江と尾張のいざかいは深くなっていく一方じゃ」
幸村は瞑目する様にして言った。
「果たしてこれがどうなるか」
「まさかと思いますが」
「どちらかが軽挙に出る」
「それもありますか」
「出るとすれば七将じゃ」
尾張派の彼等というのだ。
「治部殿を特に嫌っておられるからな」
「それ故にでですか」
「軽挙に出るやも知れぬ」
「そうだといいますか」
「うむ、そうならぬことを祈る」
まさにというのだ。
「これからな」
「ですな、まさに」
「若しあの方々が軽挙に走れば」
「その時は」
「豊臣家は天下どころではなくなる」
こう言うのだった、そしてだった。
幸村は石田と七将の対立の深化も父や兄に伝えた、昌幸は幸村のそ文を見て信之に対してこう言ったのだった。
「これは危ういな」
「治部殿が」
「治部殿だけではない」
「では豊臣家が」
「家臣が今二つに分かれれば」
その様な状況になればというのだ。
「そこに付け込むことが出来る」
「だからですか」
「これは危うい」
「豊臣家が」
「天下人の座を失うやもな」
今はまだその座にいるがというのだ。
「これは」
「そうなりますか」
「まだ趨勢ははっきりしておらぬがな」
「しかしですな」
「危ういことは事実、そしてな」
昌幸はさらに言った。
「わしは真田家を残す」
「例えどうなろうとも」
「その為の手を全て打ってじゃ」
「そしてですか」
「生き残る、わかったな」
「さすれば」
「御主もそれはわかってもらう」
信之自身にも言った。
「わかったな」
「はい、それでは」
「治部殿は口が過ぎた」
石田についてはだ、昌幸は一旦瞑目してから述べた。
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