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真田十勇士
巻ノ七十七 七将その二

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「そうなる」
「策ごでざるか、しかし」
 最初に言ったのは猿飛だった、彼はどうにも認められぬといった顔で幸村に対してこう言ったのだった。「それはどうもでござる」
「左様、汚いでありますな」
 清海も猿飛と同じ考えだった。
「策で天下を取るなぞ」
「確かに戦で人が大勢死ぬよりはですが」
 望月も二人に近い考えだった。
「いいにしてもこれは」
「武士としてはどうか」
 穴山もこう言う。
「そう思いまするな」
「策も必要とはいえ」
 根津も釈然としないものを見せている。
「それでも策ばかりとは」
「おそらく本多親子と崇伝殿ですな」
 誰が策を考えているのか、筧は察した。
「近頃内府殿のお傍にいるというこの方々ですな」
「策もまた使うものとはいえ」
 伊佐も少し考える顔で言う。
「そればかり使うのはよくはありませぬな」
「策はあくまで必要だから使うもの」
 霧隠もはっきりと言い切った。
「みだりに使うよりも正道かと」
「どうも本多親子と崇伝殿は策ばかりで」
 最後に言ったのは望月だった。
「真の政も出来るにしましても」
「うむ、この御仁達は政もあるが策が強い」
 幸村も本多正信、正純親子と崇伝についてはこう述べた。
「非常にな」
「そのせいで、ですな」
「どうにも好きになれぬのですか」
「それが強過ぎて」
「我等にしても」
「御主達は忍じゃが陽の気配が強い」
 このことを言うのだった。
「だからな」
「こうしたことについてはですか」
「どうにも好きになれぬ」
「そうなのですな」
「そう思う」
 まさにというのだ。
「御主達もな、そしてな」
「殿もですな」
「あの御仁達は好きになれぬ」
「そうなのですな」
「確かに策は必要じゃ、父上もよく使われておる」
 武田家の家臣だった時から謀臣として知られその策はかなりのものだった、それで幸村も策自体は否定しないのだ。
 しかしだ、本多親子や崇伝の策についてはこう言うのだった。
「必要にしてもあまりにも陰湿で弄しておる」
「それが問題ですか」
「あの御仁達の策は」
「そうであると」
「どうにも汚いところが多い」
 彼等のそれはというのだ。
「武士の道に外れておる、崇伝殿にしてもな」
「僧ですが」
「それにしましては」
「随分と生臭いですな」
「策が多いですな」
「やはり好きになれぬ」 
 これが幸村の答えだった。
「どうしてもな」
「そうなりますか」
「どうしても」
「そうなのですな」
「うむ」
 こう言うのだった。
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