146部分:白銀の月の下星々は輝きその四
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す。騎士の風上にも置けぬ卑劣な男です。それはターラやマンスターの件でお解りでしょう」
「うん・・・・・・。だけどトラキアの者は何故あの様な男を支持しているのだろう」
「それはトラキアに行けばわかる」
レヴィンが口を開いた。
「レヴィン・・・・・・」
「イザークやレンスターと違いトラキアは高い岩山に囲まれ土地も痩せている。他の国々と比べて極めて貧しいのだ。トラバントはそんなトラキアの民を救う為自ら槍を手に取って戦っているのだ。それがダナンやレイドリックのような連中とは違うことだ。だからこそトラキアの者はトラバント王についていくのだ」
「なら・・・・・・」
「だがそれはトラキアの為だけでありトラキアだけの正義だ。攻められ戦火に曝され家族や大切なものを奪われるレンスターや他の国々の者はどうなる?トラバント王の掲げる正義とは他の者の犠牲の上に成り立つ正義だ。それでは帝国と変わらないではないか」
「・・・・・・・・・」
「セリス、我々は大陸全体の為に戦っているのだ。その為には避けて通れない壁もあるし矛盾もある。だが我々はそれを乗り越え進んでいくしかないんだ」
「・・・・・・・・・」
だがセリスはそれに答えない。否、答えられないのだ。
「解からないか。まあ良い。いずれ解かる。そのとき御前はまた一つ大きくなる」
セリスは窓の方を見た。夜の空に白銀の月が輝いている。
ふとマンスターとミーズで対峙したアルテナ事が脳裏に浮かんだ。美しい瞳に哀しみを宿らせた敵国のあの王女が忘れられなかった。
(トラキアの者達もこの月を見ているのだろうか)
月は白銀の光でマンスターを照らしている。その光は優しく苦しみや悩みさえも包み覆っているようであった。
第三夜 完
2004・1・8
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