第百二十四話
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くユウキが、まるでどこかに消えてしまうような錯覚に陥ってしまい、抱き留める力を強くしてしまったところ――俺は確信することになった。この彼女が消えてしまうのは、錯覚でもなんでもないのだと。
――この日、アスナからあるメールが届いた。内容は、とても信じられないものであったにもかかわらず、まるで頭の中から離れることはなかった。
ユウキの容態が急変したと、ユウキの主治医を名乗る者から連絡があった、と。ユウキからメールアドレスを聞いていたその人物は、ユウキがよく話していたというアスナに、最期を看取って欲しいと連絡を取ったのだ。
そこで俺たちは初めて、ユウキの身体をずっと侵していた、病魔の名前を知ることとなった。後天性免疫不全症候群――通称、エイズ。医療に携わる者でなくとも、その名には聞き覚えがある名前に、俺は居ても経ってもいられずにALOにログインした。
ALOにログインしたところで、俺に出来ることはない――それでも、ただ黙っていることは出来なかった。恐らく、アスナのメールを見た、他のみんなもそうだろう。そうして前回ログアウトした、リズベッド武具店の二号店に現れると、俺を待ち構えていたような人物に会った。
「……どうも、ショウキさん」
「テッチ……」
ユウキが大変なんだ――と言いそうになった言葉を、すんでのところで俺は飲み込んだ。俺が知っているのに、同じスリーピング・ナイツの仲間が知らないわけもなく――ユウキがどんな状況なのか知った上で、この糸目のノームは俺を待っていたのだ。
「ショウキさん……ユウキを、怒らないであげてください。共に遊んだ初めての『友人』たちに、エイズのことを打ち明けることは出来なかった……」
感情というものを感じさせない――いや、無理やり抑えつけているような表情のテッチから、そんな言葉が告げられた。
かつてユウキから、難病を患っていて治療中だとは聞かされた。メディキュボイドという環境のことも――だが、既にエクスキャリバーの入手クエストを共に行く間柄になっていた俺たち、いずれ死に至る病だとまではユウキは言えなかった。
もっと違う出会い方をしていたならば、彼女の真実を知ることが、彼女にもっとしてやれることがあったのだろうか――
「……湖上都市《パナレーゼ》。そこでユウキが待っています……行ってあげてください。デュエルの決着を、つけたいと」
――いや、そんなことは今更語ることではない。それに今からでも出来ることはあると、こうしてテッチが震える唇から紡いだ言葉で伝えてくれた。
「……テッチは行かないのか?」
「最期の挨拶は、しないことにしてるんです……お互いに」
そうしてリズベット武具店二号店の扉を開くと、俺は一路、湖上都市《パナレーゼ》
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