来栖川綾香
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口になさらず、このままでは脱水症状に……」
「そ、そうなのか… ほら綾香、何か飲むか?」
リムジンのバーから、グラスやジュースのボトルを取り出して見せる。
「ひぃっ! ビッ、ビンは嫌ぁぁっ!」
瓶を異様に恐れる綾香を見て、今の状況を理解した浩之。「ビンに入ったお薬を持っていて、綾香が怖がる人」で思い当たるのは一人しかいなかったので、薬、瓶入り、は体が受け付けないのだと思えた。
「すっかり怯えてしまわれ、召使い達や医者、セリオも近寄らせないのです。特に「薬」を目にすると、手が付けられない程暴れられて… ううっ」
「ああ… そうだな、暫く綾香を取り囲んだり、目に付く所に「薬のビン」を置かないでくれるか? セリオもマルチもだめだ」
「はい、しかし今日は綾香様の身に何があったのでしょう? それを思うと私は、私は」
そこで綾香の耳を塞いでから、そっとセバスチャンに耳打ちする。
「さっきの琴音ちゃんって子は超能力で綾香をふっ飛ばして、離れた所から心臓を掴んで止めようとしたんだ」
ビクウッ!!
まるで感電したように、大袈裟な反応をするセバスチャン。
「超能力、ですと?」
「ああ、その上、メイドロボとか機械を操れるんだ、マルチとセリオ操って、葵ちゃんも坂下も倒された。綾香も信用してたセリオに蹴られそうになって取り乱してたし、マルチ一人迎え撃つ準備しかしてなかったから、こっちはボロボロ。逃げ道も無くなった所で先輩、芹香さんが来たんだ」
「まさか……」
「ああ、先輩がまた「お友達」を呼んじまったんだ」
「や、やはり…… では、藤田様もご覧になられたのですか?」
「ああ、もしかして、あんたも紹介されたのか」
お互い、一般的な反応を見て来たので、間接的な表現しか使えなかった二人。 自分達の体も「アレ」を口にして説明するような勇気は持ち合わせていなかった。
「よくご無事でしたな…」
「あんまり無事じゃない…」
二人の間に、大きな災害や戦争を共にしたような、漢の友情が芽生えようとしていた。 セバスチャンも単に「幽霊を見た」とか、そんな生易しい経験では無かったらしい。
「しかし、普通の方ならば」
「その日の記憶を無くすか、何も無かった事にするんだろ」
「左様です」
これでやっと、なぜ綾香が自分を探していたのか分かった浩之。
「そうか、何であんたと綾香が一緒なのかと思ったけど、あれに耐えて、先輩を止められる奴じゃないと駄目だったんだな」
ビクッ!
何故かそこで驚くセバスチャン。
「芹香様を止めた? ですと?」
「え? ああ、さっきは日も呉れたし、皆んなを送り返さないといけないから解散しようって、お友達にも帰ってもらったんだ」
頭をかきながら、自分の情けない対応を話す浩之。
「そうでしたか、ご立派でしたな、
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