赤い目
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アッ カアッ カアッ!
周囲の異様な雰囲気に、境内の鳩やカラス達が、慌てて飛び去って行く。
「何だ? 今朝と同じじゃないか」
第六感の無い素人の浩之でも、今の異様な感触には気が付いた。 そして武道を極めた者達には、当然のようにこの殺気を感じ取る事ができた。
「綾香さんっ」
「ええ、来たわね」
来栖川から監視のために来ていたのか、浩之を守るためにいたのか、綾香達も身構える。
「おい、あれって?」
「ひろゆきさ〜〜〜ん」
異様なオーラを纏い、石段を登って来たのはマルチだった。 制服も知らない学校の物を着て、笑顔も、人間らしい表情も何も無く、赤い目だけを光らせていた。
「マルチサン、ヤハリアナタデシタカ」
「許さない…」
構えを取ると人工筋肉が引き締まり、マルチの駆動音が大きくなった。
キュウウンッ!!
奇妙な姿勢から飛び上がると、人とは違う動きで葵に襲い掛かるマルチ。 関節の位置は人間と同じだったが、掛けられるトルク、耐久力は人外の物で、普通の人間なら動きを追う事すら出来なかった。
「ハッ!」
空中でセリオが迎撃し、マルチを叩き落としたが、制服以外にダメージが及ばず、境内に落ちたマルチは人外の動きで正立姿勢に戻り、首を180渡回転させて三体の敵と要救助者(浩之)を確認して戦闘態勢に入った。
「何してるんだよっ? マルチッ! 正気にもどれっ!」
浩之的には人間らしく、無能なロボットがマルチだったが、本来の性能を引き出されている機械は、葵や綾香の急所を正確に狙って攻撃を始めた。
「おいっ、ロボット三原則とか、どうなってるんだ?」
「そんなの簡単に書き換えられるのよっ、誰かさんの手でね」
「ええっ?」
マルチの意思ではなく、別の人物によってプログラムを書き換えられてしまっているようで、人を襲い、急所を攻撃するのに何の躊躇いも持たない殺人機械。
「あれ? もうバレちゃいましたか? 来栖川さん」
マルチに続いて神社の階段を登って来た人物、その少女も赤い目を輝かせていた。
「誰だ、お前?」
坂下も知らない少女は、格闘家たちを恐れもせず、境内に立った。
「始めまして、でしたか?」
神社の周囲では、何かの機械音が蠢いていた。
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