赤い目
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し増えていた。
「なあ、どうしてお前がここにいるんだ? 坂下」
「フッ、知れた事を、空手は私闘を禁じられている。 私はそれを破って葵と戦った。 道場をやめ、空手部を退部したのは私のけじめだ」
「あれは試合だ、道場は無いけど、ここは練習場だし、ちゃんとルールに従ってやった試合だ」
「だとしても、他流試合も禁止されている、私闘と何ら変わりは無い」
「それは分かった、だからどうしてここにいるのか聞いてるんだ」
「聞くまでも無い。 私は綾香に敗れ、また葵にも敗れた。 空手部で目指すものの無いまま、同好の士が集まっても何も得る物など無い、だから私はここにいる」
「ここ… 同好会だぞ」
「……それを言うな」
少し顔を赤らめ、向こうを向いてしまう坂下。
「ほらっ、そこ、手が止まってるわよ」
(お前もだ… 綾香)
校外とは言え、何故か寺女の制服を着た女が二人。
「エイッ! ヤアッ!」
(セリオって鍛えても意味無いと思うんだけど、やっぱり言ったら殺されるのか?)
綾香には「どうしてここにいる」と聞く前に倒され、地べたを這い、石畳にキスしていた浩之。
「お前らは、もっといい場所でトレーニングすればいいだろ」
「違うわ、設備が整った場所で、お抱えのドクターが健康管理してるなんて、鍛錬じゃ無いのよ。 そう…(遠い目)身も凍るような雪山で、自分で大木を切り倒して、斧で割って暖を取ったり…」
もう目付きが変になって、遠くを見つめている綾香。
「そうですよね、やっぱり特訓って言えば…(遠い目)足の甲だけで棒にぶら下がって、足の裏に置かれた湯飲みを、中のお茶をこぼさないように、腹筋だけで起き上がって取ったり、そこでまた頭の上に湯のみを置かれたり、ふふっ」
笑っていても、目付きは危ない葵。
(こいつら、実はマゾだな…)
「そう、それで、監視の車が付いて来れないような、腰まで埋まる雪の中を駆け上って、山の頂上で「ドラ〜〜クォ〜〜!」って叫ぶのが特訓なのよっ!」
仁王立ちになって涙ぐむ綾香、きっと書記長閣下の前で戦って、共産主義の人と友情を芽生えさせたりするらしい。
「ええ、壁と壁の間を手と足だけで登ったり、指だけでクルミを砕けるまで… うふふっ」
こちらも、すっかり目がイッちゃってる葵ちゃん。
(強くなる為の基本はこれかっ、これなのかっ)
訓練の為なら、苦しい状況に置かれて、自分を苛め抜くのが快感らしい。 それからは葵ちゃんに、「強くなる為」と称して、荒縄でしばり上げたり、ローソクや木馬で責め立てようと画策するようになった浩之だった。
「よーし、そこまでっ」
夕暮れの境内で、鍛錬が終わって、サンドバッグを片付ける逞しい女達。 そこで、神社の階段を何かが登って来た。
「ひろゆきさん…」
クゥ クゥ クゥッ! カ
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