レッドホワイト・バレンタイン
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あるいは、更にフリーズさせるかのように。
エルシャは、彼女から渡された箱(彼女曰くチョコレートが入っているらしい。どういうことなの)を持ったままの、俺の手を握ると、赤い瞳で俺を見つめて、美しい唇から、鈴の音のような声で紡いだ。
「私は、先輩に、恋をしています」
「私は、先輩が、好きです」
「ずっと。ずっと。――初めて、私に話しかけてくれたあの日から、きっと」
それは嘘だ。欺瞞だ。偽りだ。だって俺に、君に好きになってもらえる要素なんて、何処にもない。
「俺以外の人間が、それをしたかもしれないじゃないか……」
「そうだとしても、私はきっとあなたが好きになっていました」
一度、どこかで、その姿を見て、声を交わしたならば、なおさら。と、彼女は続ける。
「でも、俺……俺のどこに、そんな……俺は君の役には立たないぞ……?」
「そんなこと関係ないです。私は、先輩自身のことが好きなんです。先輩がどういうひとかなんて関係ないです」
でも、と彼女は切る。もっと信頼してほしいから続けます、と。
「先輩の、魂のあり方が、って言ったら、どう思いますか?」
「……君が、悪魔かなにかなんかなんじゃないかと思うぜ……小悪魔だとしても問題ねぇ可愛さだからな……」
絞り出した解答は最硬に気持ち悪かったが、エルシャは可愛い、という言葉に顔を真っ赤にして、あたふたとうつむいた。
「えっと……その……そういうことじゃ、なくて。先輩の、接し方と言うか。先輩の心の奥底、きっと意識していない所にある、基準みたいなものが。私を、支えてくれたんです。一人ぼっちじゃない、って」
***
先輩。
先輩は、自分は大したことない魔法使いだ、って、何回も何回も言いますよね。
先輩が、自己評価の低い人だって、知ってます。それに実際、先輩より、私の方が強いですし。
でも。そこじゃないんです。
先輩が、昔住んでた世界にこんな言葉があった、って、言いましたよね。
――愛は全てに打ち勝つ。愛は全てを凌駕する。
私、きっと、それが……それが、先輩のことを好きな理由。
あなたの、ありかた。同じ在り方をしているひとは、世界中にあなただけ。
それならきっと、あなたは魔法使い。
そこにいて、会話をして、ふれあうだけで。いつか、人を、幸せにしてくれる――そんな魔法使い。
愛の魔法。
「あーっと……その……悪い、ちょっと混乱してる……」
「はい。私も突然告白しましたから。混乱させるつもりで」
「ひでぇや」
笑う。私も。貴方も。
「その……今はちょっとわからん、と
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