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【掌編置場】コーナー・オブ・テキストレムナンツ
レッドホワイト・バレンタイン
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だかは分からない。多分、気まぐれ。

 ぱぁ、と、安心した様に顔を輝かせる青年。その姿に、少しだけ、胸が痛くなって。

『よ、よかったぁ……あの、俺、二年の……グノーシス。ソレイユ・グノーシス。よろしくおねがいします』
『はぁ……一年の、エルシャ・マルクトです』

 自己紹介を終えて。二人で、ダンジョンに向かって。怯えるモンスター達を一方的に虐殺して、最深部へと向かった。
 正直な話、ソレイユは役に立たなかった。彼は非常に弱く、最弱のモンスターの一つであるアグロゴブリン一体に苦戦するありさまだった。
 けれど、一生懸命で。

『お疲れ様です』
『うへぇ……疲れた……あ、ありがとう。エルシャみたいにすぐ倒せなくてごめんな』

 何故か、誰もが怯える、エルシャの力にまるで怯えていなくて。

『エルシャは強いなぁ。羨ましいぜ』
『……いいことばっかりじゃありません。この邪神の力も……』
『邪神の力だぁ? やだ……何それ厨二……超カッコいいんですけど……』

 どうしてなのか、こともあろうに『カッコいい』などと言い放って。

 攻略祭が終わった後も、少し彼のことが心に引っ掛かって、何度も何度も彼に話しかけた。話せば話すほど面白い人で。この世界の価値観にとらわれていない、というか、発想が柔軟なひとだった。俺の心は異世界から来た――などと訳の分からないことを時々言うけれど、そんな所も、楽しくて。
 
 気が付いたら、彼を目で追う様になっていた。彼と、知らない女性が話しているだけで、胸の奥がずきずきするようになって。毎晩、寝る前に彼のことばかり考えるようになって。

 恋をしているのだ、と気が付くまでには、時間はかからなかった。初めての感情で、戸惑いを隠せなかったけど。でも、ちょっとずつ、ちょっとずつ、ソレイユにも、好きになってもらえるようにがんばって。

 それで、今日、此処にいる。

「ひ、人ごみが……チクショウ……何でまた人類はこんな日を作ったのか……」

 手を繋いで隣を歩く彼は、ちょっと人間嫌いだから、商店街のにぎやかな雰囲気は苦手な様だった。

「どこか、休憩できるところに行きましょう」

 提案する。ぱぁ、と輝く彼の顔。分かりやすい。なんというか、子どもっぽい。
 でも、そんな所も――好き。
 
 きっと、自分に最初に優しくしたのが、彼でなかったら、その『別の人』のことを好きになって等いない。彼だから。ソレイユ・グノーシスという、彼だからこそ好きになった。恋をした。


 やって来たのは個室のある喫茶店だった。取り敢えず飲み物を頼む。ソレイユは苦い飲み物が苦手だ、と言っていたので、コーヒーを頼むのは止めた。
 ……本当は、これから渡すものはとても甘いので、ギャップみたいなも
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