レッドホワイト・バレンタイン
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苦手だったので合ってるのか分からん。
そんなことを考えて悶絶していると。
「あ……先輩!」
エルシャがやって来た。
卒倒しかける。
彼女は普段は束ねて流している純白の髪を太い三つ編みにして、制服ではなくこれまた白っぽい、レースのついたカーディガンとスカート。赤い瞳を蓋う眼鏡は、黒ではなく赤になっている。走って来たのか。頬は上気し、瞳は潤み、男を殺しに来ている。
か、可愛過ぎやで……。
「おまたせしました」
「お、おう……いや、大丈夫。あんまり待ってないし……」
俺がどもりながらそう答えると、彼女は笑って返した。
「ふふっ……ありがとうございます。じゃぁ、行きましょう。午前中ずっと、楽しみにしてたんですから」
そう言って、彼女は俺の手をとる。
まてまてまてやばいやばいやばい。
――どうなってるんだ……。
心の中で呟かざるを得なかった。
***
エルシャ・マルクトにとって、ソレイユ・グノーシスという男性は、一学年上の先輩であり、人生はじめての、即ちたった一人の友人であり、そして――初恋の相手である。
エルシャは邪神の血を引いていた。勇者アンリマユと聖アンリエッタの子孫である。
人類は知らない。聖アンリエッタが邪神であるということを。
人類は知らない。勇者アンリマユもまた、邪神であるということを。
エルシャの身体に流れる邪神の血は濃い。彼女は邪神として覚醒こそせねど、邪神の証たる深紅の瞳と、世界を破壊する魔法――【壊滅具】の顕現を行う力を持って生まれ落ちた。
生まれた時から、迫害されてきた。邪神の子、と罵られた。優しくしてくれた人なんて、一人もいなかった。人間ではなく異種族でも。それどころか、ダンジョンに住まう凶暴なモンスターでさえ、エルシャを恐れて逃げ惑う。
一人だった。誰もいなかった。エルシャの世界にはエルシャだけしかいなかった。
踏み込んできたのは、一人の青年だった。人ごみの中に埋没したら分からなくなってしまうほど特徴のない、黒髪黒目の青年。学園の攻略祭の折に話しかけてきた、彼。
『その……パーティ組む人がいないんすけど……よろしければ組みません?』
唐突にそう言った。うわ何言ってんだ俺気持ち悪……などとぼそぼそと呟く青年。
攻略祭は安全面の問題で、最低でも二人で挑む必要があり、加えて参加は強制だった。
しかしエルシャには組む理由が無かった。学園側も彼女を排除したいのか。危険なダンジョンの中で力尽きることを願っていたのか、エルシャは一人でダンジョンに潜ることが許されていた。だから、本当は、承諾する必要は無かった。
『わかりました』
でも、した。何故
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