レッドホワイト・バレンタイン
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先輩」
後ろから声をかけられた。
振り向けば、そこにいたのは輝かんばかりの美少女。
雪のような白い髪、絹の如き肌。黒縁眼鏡に隠された、宝石に例えることも可能な深紅の瞳は、今俺だけを写している。
魔法学校の制服に身を包んだ彼女は、
「おはようございます、先輩」
「あ、ああ、エルシャか……おはよう……」
俺のキョドった挨拶にも嫌悪の表情を見せず、微笑を浮かべるだけ。
エルシャ・マルクト。この世界に転生してから最初に出会った人物であり、一学年下の後輩である。
俺は今二年生だが、彼女は一年生の中でもトップクラスの実力をもつという。全ての属性の魔法をまんべんなく操る実力、高い戦闘能力、尽きない体力、そして何より人間離れした可憐さ。
人々からの人気が無い訳が無い……と思われるのだが、実は彼女の評価は学園ではあまりよくない。
なぜかと言えば、その目の色である。
赤。深紅。ガーネットレッド。真紅色。
それは、邪神の証である。
かつてこの世界を襲った邪神たちは、皆一様にこのガーネットレッドの瞳を持っていた、らしい。邪神を斃した勇者の一人、その恋人を讃えるために、聖アンリエッタ祭なるものを開くくらいだ。この世界の人間は邪神に関してかなり病的なアレルギー反応を起こす。
エルシャはその赤い目故に、学内でも排斥される立場にある。彼女が生活していけるのは、ひとえにその圧倒的な戦闘能力故に。
全く、彼女と敵対していなくて本当に良かった――と、いつも思って仕方がない。
「先輩、今日のご予定は何かありますか? ……すみません、無いですよね」
「ねぇ君俺のこと馬鹿にしてるの!? 悪かったなぁ光の曜日にわざわざあるアンリ祭に何の予定もない哀しい男で!!」
くすくすと可愛らしく笑うエルシャに、思わず突っ込みを入れてしまう。くそっ、どいつもこいつも! いやこの学校で話し相手なんざ精々エルシャだけだから『どいつ&こいつ』がいないんですけどね!!
「じゃぁ――」
するとエルシャは、微笑を浮かべて、言った。
「放課後、私とデートしませんか」
……パードゥン?
***
この世界の七曜表は、前述の属性に対応して、火、水、風、土、闇、光、そして無属性の日である『空』、だ。空の日は安息日と呼ばれ、基本的には仕事は無い。地球におけるそれとは違って『働いてはならない』というものではなく、『働かなくてもいい』日である。万歳。
対して、光の曜日――地球における土曜日にあたるこの日は、午前中は労働をしなければならない。つまり、学業は午前放課ではあるが存在するのである。俺が登校していたのはこれが理由で、エルシャが放課後、と言ったのは、午後がまるまる空いてい
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