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【掌編置場】コーナー・オブ・テキストレムナンツ
レッドホワイト・バレンタイン
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ユ少年の魔法使いとしての性能ははっきり言って産業廃棄物。むしろ何故魔法使いを目指したのかこいつは、というレベルであった。
 火、水、風、土、光、闇という六つの属性、そのいずれにも低い適性しか示さず、系統外となる無属性魔法にすら適正なし。独自の魔法たるユニークマジックも有しておらず、魔力もほぼ最底辺。およそ魔術師として必要なあらゆる条件がたいしたことなく、全くのゼロ、というワケではないのが唯一の救いと言うかさらにしょっぱさに拍車をかけているというか。
 おまけに剣術などの物理攻撃方面にも一切の才能は無く、体力も少ない。筋肉もなく体は細く、おまけに背が高いわけでもない。体格差も生かせない。
 まぁどうあがいても産廃なのである。

 顔立ちはファンタジー世界だから、前世の俺よりはまだましだ。が、黒髪黒目に何の変哲もない、西洋人とも東洋人ともつかない外見と言う、こう、悪くは無いんだけど別にいいわけでもないし、普通と呼ぶにはちょっと不細工というか、そんな顔であった。

 どう神々がビルドエラーを引き起こせばこんなのが生まれるのか、と思えるレベルだ。

 だから俺は、この世界でも『敗者』である。

 忌々しき2月14日。この世界では『聖アンリエッタ祭』というらしい。
 大昔、旧世界と呼ばれる時代に世界を救ったとされる勇者、『邪神の勇者アンリマユ』という人物がいた。彼の永遠の恋人とされるのが、『聖女アンリエッタ』である。
 今やそんなことは無いが、昔はこの世界には定期的に『邪神』なる存在が降臨し、勇者達の手によって斃されていたらしい。
 アンリエッタはアンリマユと当時の邪神との戦闘において、邪神の一撃からアンリマユを庇って亡くなったそうだ。その献身的な愛に敬意を表し、アンリマユが2月14日を彼女の記念日とした、とされる。ついでにチョコを送らせる文化も付け加えた。アンリマユの好物だったらしい。

 ――ただの惚気じゃねーか。と、何度思った事か。しかも実際にあった出来事なのかすら怪しい。そりゃバレンタインの話も実在の話しなのかよく知らないけど、『旧世界』の情報はほとんど今の時代には残っていない中での噂では、信ぴょう性はあってないようなものである。
 ただし、当時のことを知る人間が、西の果ての山にまだ一人だけ生きているとかいないとか。信じられん。それこそ眉唾だ。旧世界は二千年以上前の時代のことだという。エルフの様に長命の種族がいない世界ではないが、最高齢のハイエルフですらたしか1300歳である。それより長いとなるとそろそろ意味が分からなくなり始める。

 まぁ真偽のほどはともかく。
 忌々しきチョコ商戦の日はこの世界にも存在し、俺はまた、その流れから取り残されていくわけである。あぁ、クソッタレ……。

 などと思っていると。


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