目出度い鯛でお祝いを・1
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んでも解るか。まぁとにかくとっとと傷を治させる。
「ありが……とう、ございました………」
ズルズルと左足を引きずりながら、入渠ドックへと向かう初霜。その後ろ姿が完全に見えなくなった所で口を開く。
「妹がいたぶられてる所を覗き見たぁ、感心できた趣味じゃねぇな?初春よ」
「なんじゃお主、気付いておったのかや?」
物陰から姿を表したのは初霜の姉である初春型駆逐艦の1番艦である初春。今日は遠征の予定だった筈だが、何故だかクーラーボックスを抱えている。
「あぁ、これかや?遠征に向かう途中で襲われている漁船に出くわしての。助けたらばお礼にと頂いたのじゃ」
まぁ、お陰で遠征の燃料やら弾薬が足りなくなって引き返して来たがの、とカラカラ笑っている。遠征の部隊は既に入れ替わりで他の連中が任務を引き継いで向かったらしい。流石は大淀、アクシデントの対応が早い。
「それで俺の所に持ってきた、ってワケか。……んで?中身は何だい」
「これじゃ」
パカッと開けると、そこには見事な真鯛と金目鯛がクーラーボックス一杯に納められていた。
「おぉ、見事な桜鯛じゃねぇか」
真鯛の旬は2〜4月。5月に産卵する為に沖合いから沿岸部に寄ってくる。丁度桜の季節と被る上に、見事な桜色に鱗が染まるから桜鯛と呼ばれる。
「そうじゃろう?今宵はこれで初霜を労ってやろうと思うての」
「ほぅ、悪くねぇな」
「なので提督よ。料理はそちに任せたぞ?」
これだけ見事な鯛を見せられちゃあ、俺の腕も疼くってモンだ。
「あぁ良いぜ、今晩2人で来な」
さぁて、こいつで何を作るかな……?
開店と同時にやって来た客がハケて、一段落した午後7時頃。初春が初霜を引き連れてやって来た。
「らっしゃい」
「提督よ、約束通りに来たぞえ」
「こ、今晩は……」
「準備できてるよ。今夜は鯛のフルコースだ……おっと、その前に何か飲むかい?」
カウンターに腰掛けた2人は似たように腕を組んでう〜んと唸っていたが、
「やはり、魚を食べるなら日本酒でしょうか?」
「そうじゃのぅ。何かオススメはあるかえ?」
オススメを尋ねられて、俺はそういう事ならと一升瓶を出してやる。
「『本仕込 浦霞』……宮城の酒なんだがな。柔らかい口当たりと爽やかな香り、端正なキレが特徴で魚との相性がいい。冷やでも熱燗でも美味いぜ」
「ほほぅ、ならばそれを貰おう……して、最初の肴は何じゃ?」
初春の言葉に俺は不敵にニヤリと笑う。
「最初はシンプルに刺し身と『昆布締め』だ」
《そのままでもお茶漬けでも!鯛の昆布締め》
・鯛の刺身:サクで1枚
・昆布
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