テーマ短編
ヴァレンタイン番外編:貴方に渡したい物
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した、里香だ。
「リズ?」
「だってそうでしょうよ。今日リョウがいっぱいチョコレート食べるのは分かってたから、一人くらい身体に良くておいしいもの作ろうとして、美幸は何日も前から頑張ってたんでしょ?」
「えっ!?な、なんで知って……」
「毎日レシピ本とにらめっこしたり図書館行ったりノートに何かガリガリ書いてるの見りゃ、誰だって気が付くわよ」
誰も知らないと思っていたのはどうやら自分だけだったらしいと自覚した途端に、美幸の顔が火を噴きそうに朱くなる。そんな彼女を見ながら、涼人はますます困ったように頬を掻いて……視線の先に居るリズが真っすぐ自分を見ているのをみて、いよいよ逃げ場がない事を知った。いや、こんな事を知ってしまった時点で、そもそも何処にも逃げ場はないし、逃げる気もないのだが。
「あー、美幸」
「は、はいっ……」
名前をよぶと跳ねるように自分の方を見る彼女の目を、真っすぐに見る。期待と不安が入り混じったそんな目を見て少し苦笑してから、涼人は素直に言った。
「その、なんだ……ありがとうよ。やっぱ、お前にメシ頼んでるときは、安心だわ」
「えっ……」
「俺はその、よく食うからな。これの事だけじゃなく……SAO時代のお前のメシも含めて、感謝してる」
「…………」
ぽろりと、小さく、透明な滴がこぼれた。
自分の目尻からこぼれたそれを慌ててぬぐうが、それが後から後からこぼれて止まらなくなる。
「あ、あれ……おかしいな……あれ……?」
「お、おい、美幸?」
「その……ごめっ、ごめんねっ……普段、そんな風に思ってくれてるなんて、おもってなくてっ……!ちょと、嬉しくって……!」
「あ、あぁ……」
どう対応したらいいのか分からずに、珍しくしどろもどろとなった涼人の前で、少女の小さな鼻をすする音が響く。店中が静かにそれを聞いているのを見て、これまた珍しく慌てたように、涼人が言った。
「おいこら!見せもんじゃねぇよ!!」
「えー?なにー?女の子を泣かしたのが見られたくないのー?」
「リョウさん、女の子を泣かしたら責任取らなきゃいけないんですよ?」
「なんの話だっつう!!?」
そんな事を言っている内に、少し落ち着いたらしい美幸が、リョウの方に何とか向き直る。
「あ、あのっ、りょう!」
「だからうるっせ……!あ?あぁ、なんだ?」
「あの、ね……私も……感謝してるの!だから、これはそのお礼……!」
「……おう」
すんっ、と鼻を少しだけすすって美幸は息をすう。それからいつものような、ちょっと晴れた目ではにかむように笑って、言った。
「いつもありがとう、りょう!」
どうか素直な感謝と好意を伝えられる日でありますように。
Happy Valentine.
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