テーマ短編
ヴァレンタイン番外編:貴方に渡したい物
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一体。
「……はあぁ……」
「?なんだお前、人に渡しといてため息付くなよ……」
「えっ?あ、ご、ごめんそんなつもりじゃなくて……」
「ふん?まぁ良いけどよ……で、これ、あけていいのか?」
「あ、うん」
コクリと頷く美幸の後ろで、やたらと非難がましい目で里香たちがこちらを見ている。加えてキリトの前の明日奈がもはや隠そうともせずに冷気交じりの視線を送ってくる。自分が何をしたのかと問いたいのは山々だが、とりあえず頼むから目の前の旦那さんがとんでもなくヒヤヒヤした顔をしてるのに早く気が付いてやってほしい。
「こいつは……トリュフと、なんかか?」
「ふふ、残念、外れ。トリュフじゃないよ」
長方形の小箱をぱかりと開くと、中には綺麗に仕切られた10個のチョコレートが入っていた。少し大きめの正方形のキューブ型のものと、同じく少し大きめの銀紙で包まれた球状のものが、それぞれ五つずつ。二種類に分かれているようだが……
「……?」
「あの……食べても、いいよ?」
「お、そうか?んじゃ遠慮なく……」
言われて、我が意を得たりと言わんばかりに涼人は迷わずキューブ型の方を手に取る、綺麗なキューブ型のそれの表面は黒っぽく、おそらくは使われているのはビターチョコだろうと想像が付いたが……
「いただく」
「どうぞ」
ぱくり、と口の中にそれを運び、少し転がしつつ軽く食んでみる。すると……
「……ん、あぁ、これ中はホワイトチョコ……ん?」
「?どうしたのリョウ?」
不意に首を傾げた涼人に、明日奈が少し興味を惹かれたように顔を覗き込んできた。
「……あぁ、これ、レモンか?」
「うん、今度は当たり」
「え、レモンピル……?」
「うんっ」
苦めのビターチョコにくるまれてはいっていたのは、ホワイトチョコレートと、それに混ぜられたレモンの皮だ。本来ホワイトチョコだと涼人は若干甘すぎると感じるのだが、レモンの風味とビターチョコの苦味が上手くそれを抑えている。後味もさっぱりとしていて、正直普通に美味い。
「と、すっとこっちはなんだ?」
そうなるともう片方の味も気になり、涼人は銀紙に包まれたチョコレートを取り出して、口の中にほおりこむ。すると……
「ん!ん……?んん」
「あ、気に入った?」
「……ん、あぁ。こいつは林檎……の酒か?」
「うん、また正解」
嬉しそうに笑う美幸に、明日奈が少し驚いたように声を上げる。
「え、アップル・ブランデー……ってじゃあこれ……」
「うん、お母さんが隠してたお酒をちょっとちょうだいって言ってもらったの。林檎が丸ごとは言ってる、カルヴァドス、ってお酒……」
「うわぁ……ってことはさしずめ、カルヴァドスボンボン?」
「そう言うこと、になるのかな?お酒ってあんまり分からないんだけど
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