テーマ短編
ヴァレンタイン番外編:貴方に渡したい物
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ないわよねぇ……」
「勝てる気がしません……」
「ほんとだねぇ」
横に居た二人も若干呆れるレベルの手作りチョコである。と……
「[ふあぁ……アスナすごぉい]」
「明日奈さん気合入ってるなぁ……」
「あら、ユウキ?」
不意に、肩にカメラを付けた直葉が彼女達の横に来る。スピーカーから響いてくるのは、絶剣ことユウキの声だ。つい先ほどまでは明日奈の肩に乗っていたはずだが……
「あ、直葉ちゃん!あれ?ユウキさん?いつの間に?」
「[えへへ……アスナが、そろそろキリトに渡しに行く〜っていうからさ、邪魔しちゃ悪いじゃない]」
「代わりに、私がユウキさんを預かったってわけです」
「成程ね。ユウキは空気が読める子ね」
「[えっへん!]」
見えはしないが胸を張っているだろう声に、五人の穏やかな笑い声が響く。そんな中もう片方の贈呈が始まろうとしているのを目ざとく美雨が発見した。
「あ、ほら。もう片方も……」
「お、今日こそは行くかしら……?」
「うー!頑張ってくださいサチさん……!」
「りょう兄ちゃんが気づけばもっと簡単なんですけどね……」
「[?]」
何故か意味もなく姿勢を低くして様子を見守る五人の事に気が付いているのは、明日奈と涼人くらいのものか、しかし二人ともあえてそれを無視する。取り込み中だからだ。
「え……えっと……りょう……」
「おう」
「そ、その……これ……チョコ……なんだけ、ど……」
「だろうな、ってぇ……!」
そりゃその為に集まっているのだからそうだろうと言わんばかりにそういったリョウのすねを、笑顔で隣の和人と話す明日奈が蹴り飛ばした。和人と涼人以外だれも気が付いていない、閃光の名に相応しい早業。冷汗を垂らしている和人と談笑するその笑顔が、完全に「黙って受け取れ」と言っている。
「り、りょう……?」
「あぁっ、なん、でもねぇなんでもねぇ……で?」
改めて、美幸の顔を真正面から見ると、熱でもあるのかその顔は真っ赤になっている、少しばかり心配になったが、ここで余計な事をするとまた脛を蹴られそうなので控えた。
「そ、それでね……その、りょう……」
「おう」
「わ、私……りょう……だ……だい……」
ざわっ……と、一瞬にして周囲が静かになる。涼人だけが唐突なその空気の変化に何事かと動揺したが、なぜか全員の目が、さっきの明日奈と同じ目になっていたので、慌てて再び美幸に視線を戻した。相変わらず真っ赤になって震えながら、美幸はゆっくりと、涼人に長方形の小箱を差し出す。ただ差し出し方が微妙なので、受け取ったもんか受け取らざるか判断しにくく……
「だい……!」
「だい?」
「大事に食べてね!!」
「おう、あんがとな」
全周囲の空気が一斉にずっこけた。なんなのだ
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