141部分:複雑なる正義その六
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
複雑なる正義その六
マクロイの槍とカリンの槍がぶつかり合った。黄色い火花が飛び散った。マクロイは再び槍を繰り出した。カリンは身体を左に捻った。
カリンは同時にマクロイの喉へ向けて槍を投げた。それはマクロイの喉を刺し貫いた。
彼女は動きを止めたマクロイに近寄り槍を喉から引き抜いた。マクロイは間歇泉の様に血を噴き出しながらゆっくりと落ちていった。
ミーシャの天馬が上に飛んだ。コルータは槍を素早く突き出すが間に合わなかった。
ミーシャは天馬に竜の右斜め上を抜けさせた。そしてすれ違いざまに剣を一閃させた。
コルータの首の右半分が切られた。半月状に血を噴き出しながら落ちていった。
戦局は解放軍に有利となっていた。城壁に梯子が次々と架けられ空には飛兵達が舞う。マイコフの決死の叱咤激励も空しく城を解放軍の将兵達が十重二十重に囲み城門に破城槌が向けられる。
槌がズシン、ズシンと重い音を響かせながら城門を打つ。門には次第にへこみが生じだしていた。
遂に城門が突破された。解放軍の将兵達が城内に雪崩れ込んできた。トラキア軍も迎撃に向かったが解放軍の圧倒的な数の前に押し切られていた。
城壁にも兵士達が一人また一人とよじ登り空からは竜や天馬の背から兵士達が飛び降りる。
マイコフはここに至って城壁の放棄を命じ内城への撤退を決定した。残った部下達と共に内城へと向かう。
「急げ、遅れるな!」
必死に駆けながら内城を見た。まだ陥ちてはいない。
民家が左右に連なる小路を駆けていく。視界の中の内城が次第に大きくなってくる。
「よし、もう少しだ!」
目に映るのは内城である。だが左右の民家の上に複数の影が現われた。
マイコフ達へ向けて矢が一斉に放たれる。矢は唸り声をあげ彼等を貫いた。
マイコフも部下達も前のめりに倒れた。だが彼等は地に伏したままではなかった。立ち上がってきた。
彼等の前に民家の間から一人の黒ずくめの男が現われた。黒い髪と瞳を持ちその手には剣がある。シヴァである。
「多くは言わん。降伏しろ」
彼は眉一つ動かさず感情に乏しいぶっきらぼうな声で言った。
「ぬかせ、若造」
マイコフは泥と血だらけになり矢を抜きつつ立ち上がりながら言った。
「我等トラキアの武人はこれしきの傷では倒れぬ。否、例え首と胴が離れようと倒れるわけにはいかぬ」
腰から剣を抜き構えた。だが傷によりその動きは鈍い。
「うおおおおおおっ!」
気力を振り絞りシヴァへ向かって突進する。シヴァはそれを構えを取り見ていた。
「愚かな・・・・・・」
そう呟くと身体を低く屈めた。右手の剣をゆっくりと上げ前へ跳んだ。
シヴァの剣がマイコフの胴を斜めに斬った。斬られたマイコフは前のめりに倒れた。
「トラキア万歳・・・・・・・・・
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ