幕間の物語:スリーピング・ナイツ
第十七話:取り戻した日常は罅割れて
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いえばもうそんな時間か、と再び思う。
「やっほー、兄ちゃん。お見舞いに来たよ」
「おう、学校はもう終わったのか?????」
二年前までは短かった紺色の髪は、今では腰の位置にまで伸びていた。相変わらずカチューシャのようなバンダナはしているようだが。
「?????木綿季」
「うん!今日からテストなんだよー……兄ちゃんこの後数学教えてくれないかな?」
「成績はいい方なんだろう? むしろオレが覚えているか心配なんだけどな」
彼女の名前は紺野木綿季。紺野家双子姉妹の妹の方で、オレの義理の妹になる。
言動を端から見る限り、木綿季は勉強が苦手そうに写るだろうが、そんなことはない。
どちらかといえば文系寄りのユウキだが、理数系もそこまで苦手ではないはず。少なくとも、二年程全く勉強に触れなかったオレよりはできるはずだ。
「いや、それはないよ。兄ちゃんが勉強で遅れるなんてあり得ないと思う」
「おう、急に深刻そうな声にならないでくれ。どういう意味だそれは」
先程までの笑顔はどこへやら。
スンッという擬音がつきそうなほどの真顔だ。
「だって目覚めた当日から勉強しまくってるじゃんか」
「トレーニングはともかく、勉強は体が動かなくてもできるからな」
二年という月日は予想よりも重い。SAOに囚われる前は高校受験を直前に控えていたのだから、今は年齢だけで言えば高校二年生ということになる。しかし、未だ学校をどうするかなどの具体的なことは決められずにいる。義両親亡き今、ユウキの学費や生活費は親戚が出してくれているが、流石にオレの分を負担してもらう訳にはいかない。
だからと言って、勉強をしないという選択肢は初めからなかった。幸い、ある時からSAOに囚われる直前まで狂ったように勉強を進めていたお陰か、なんとか高校生の範囲はある程度理解できる。今は、忘れかけている知識を固めている最中だ。
「ほんとに、やるって決めたことはとことんやらないと気が済まないみたいだね」
呆れた、と言うような声音だがその表情は笑顔だ。そんなユウキの頭を乱暴に撫でる。
「うひゃあ!? ちょ、兄ちゃん?」
「シャワー浴びてくる。そろそろ約束の時間だしな」
そう言って壁に掛かった時計を指差す。その短針は6の文字を指していた。
「……あ、そうだね。今日は大一番だしね!」
「おう、気合い入れないとな」
そう言ってリハビリ室を出ると、ポケットに入れていた端末が振動した。
『夜7時。アルン広場集合。』通信端末に届いたメッセージにはそれだけが記されていた。生真面目な彼女らしからぬ簡潔な内容だったが、恐らくは丁寧な内容を書いて、これではリーダーとしての威厳がない等と考えた結果、この文面
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