幕間の物語:スリーピング・ナイツ
第十七話:取り戻した日常は罅割れて
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る。
真摯な瞳が、オレの視線と交錯した。
「?????君を、腕の立つプレイヤーと見込んで依頼する」
なにを言わんとしているかは理解できた。VRゲーム内の謎ならば、SAOサバイバー以上に適任はいないだろう。
オレとしても未帰還者がいるのは気に喰わない。一刻も早く解決したいと思っている。
だが。今は、ダメなのだ。
「少し、時間をもらえませんか?」
† †
SAOから生還して、凡そ2ヶ月。ペインアブゾーバの機能不全により他のプレイヤーよりも損傷の酷かったオレは、未だに入院をしてリハビリの最中だった。
全盛期に比べ、大分細くなった腕周りを眺める。これでも目覚めた直後よりは幾分かマシになったのだが、武術に打ち込んでいたあの時と比べるとどうしてもひ弱に見えてならない。これでは、師匠のところに顔を出すのは先になりそうだ。
「今日はここまでにしよう、縺君」
倉橋さんの言葉に、行っていた懸垂を止める。オーバーワークはよくない。担当医師が止めと言うなら止めるべきだろう。
手渡されたタオルで汗を拭う。時計を確認すると、菊岡さんが帰ってから三時間程が経過していた。
「大分筋肉が戻ってきたね」
「鍛えていた頃と比べるとまだまだですけどね」
覚醒当初は歩くことすら困難だったが、今では軽い運動やトレーニングは熟せるようになった。墓参りの時に車椅子だったのは長距離の移動だったのと、腕のトレーニングを兼ねて倉橋さんに提案されてのことだ。
トレーニング後の柔軟体操のために、床に座り込み、うつ伏せになるように体を前に倒す。
「おお、本当に柔らかいね」
「体の柔軟さこそ強さ、なんて師匠に叩き込まれまして。ウチの道場の連中は大抵このぐらい柔らかいですよ」
オレが弟子入りした護神柳剣流道場は、実戦を想定した武術全般を修める場所だった。SAOの最初期でオレがベーダテスター達に置いて行かれなかったのも、ここでの経験が生きたからこそだった。
剣術は勿論、抜刀術、槍術、弓術、体術、斧術……本当にこの世に存在する武器という武器の扱い方を一通り教え込まれた。
とは言え、格式ばった型がないのが柳剣流だ。人が型に合わせるのではなく、型を人に合わせる。武術の観点から見れば邪道だろうが、勝てるのならそれで構わないのだ。
一通りの柔軟体操を終わらせ、クセで行いそうになったシメの体幹トレーニングを倉橋さんに止められる。こればっかりは染み付いた流れだからどうしようもない。だからどうかそんなに睨まないで頂きたい、倉橋さん。
「やっぱりここにいた!」
そんな時だった。
トレーニングルームの入り口からそんな声が聞こえてきた。
聞き慣れたその声に、そう
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