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第七十九話 あなたは独りではありませんよ。
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さりとて何の為に自分は戦えばいいのか。復讐などというバカげたことを行おうという意思はアルフレートにビンタされてから、とうに失せている。
「何の為に戦うか、か。」
車はトンネルを抜け、丘陵地帯を抜けながら前方の市街地に向かっていた。幸いというか車の量はそれほど多くはなく、ここまで順調に来ている。カロリーネ皇女殿下は遠い目を高層ビル群に向けた。あの中に第十七艦隊司令部がある。今の自分の職務を思い出して、気を引き締めた。
* * * * *
第十七艦隊司令部は、かつての地上軍連隊本部を改装して設置された建物にあった。車を乗りつけてその建物を見上げたカロリーネ皇女殿下は「どうもヤン・ウェンリーさんは冷遇されているようね。」と思わざるを得なかった。他のビル群と比べても、年季の入った建物だったし、階層も十数階と、他のビル群に比べて低いのだ。自由惑星同盟の「跳ねっかえり・異端児」の司令官に対する風あたりは、シトレ閣下の庇護のもとにあるとはいえ、良いものとは言えないようだった。
それでも、その中で立ち働く人々はとても活き活きとしていた。ロビーで案内を乞うと、きっかり3分後にヘイゼル色の瞳と金褐色の髪を持つ美人がやってきた。今年22歳になるフレデリカ・グリーンヒルは、カロリーネ皇女殿下と5つ違いだった。
「よくお越しくださいましたわね。」
フレデリカ・グリーンヒル大尉はまだ新米中尉であるカロリーネ皇女殿下を温かく迎え入れた。
「こ、これをお届けに参りました!」
のちにフレデリカ・グリーンヒル・ヤンと呼ばれるであろう女性を目の前にしてカロリーネ皇女殿下は、上ずった声で要件を述べた。フレデリカはにっこりしてカードを受け取り、
「ご苦労様でした。お預かりします。せっかくですから、お茶でも飲んでいきませんか?」
「あ、ありがとうございます。ですけれど、もう行かないと・・・。」
山のようにたまっている業務を思い出して、内心と息を吐きながらカロリーネ皇女殿下は好意を謝してそう言った。
「第十三艦隊の司令部には私から話しておきますわ。実を言うと、あなたが来られることは前もって連絡がありましたのよ。」
「えっ!?」
「『このところ働きづめだから、少し休みを入れさせてやってくれないか。』ですって。」
「それはフロイスト少佐から、でしょうか?」
「そうおっしゃられていましたが、もっと上の方もそうおっしゃられていましたわ。」
「???」
いぶかしがるカロリーネ皇女殿下を、フレデリカはエレヴェーターに誘った。それに乗り込むと、ガラス張りのエレヴェーターは一気に上昇して屋上のカフェテリアに到着した。ここは士官学校候補生のアルバイト先として、経営されている軍のカフェテリアだったが、味は評判である。特に紅茶の味はそこいらのチェーン店に負けないほどだった。誰かが特に
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