137部分:複雑なる正義その二
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複雑なる正義その二
ーマンスター城ー
「城の周りにシューターを配しているのかい?」
セリスはマンスター城の会議室で偵察から帰ってきたエダに聞いた。
「はい。城の北側を中心に五百台近いシューターを配しております。その上竜騎士団もおり空と陸の二面で守りを固めております」
「しかしそれ位の数ならセティのフォルセティで一掃出来る。何か裏がありそうだね」
セリスの疑念にディーンが答えた。
「はい。峡谷の脇の左右の森に伏兵を配しているようです。もっとも正規軍ではなくトラキアが金と地位をちらつかせて雇った山賊のようですが」
「またか・・・・・・」
セリスは顔を顰めた。
「それで彼等を率いているのは誰だい?」
「ランクル、トルケマダ、ボゲの三人のようです」
「あの連中か、まだ生きていたのか」
ヒックスが忌々しげに顔を顰めた。
「知っているのかい?」
「はい、かってコノート王国の貴族でレイドリックの一派だった連中です。トラキアのレンスター侵攻の際レイドリックと共にトラキアに寝返りその後フリージ家のヒルダに取り入りレイドリックの悪行の片棒を担いでいたんです。ですがイシュタル王女に疎まれ暗黒教団狩りと称して罪の無い者達を殺し財を奪っていた事を突き止められ逐電したのですが・・・・・・。死んだと思っていたら山賊になっていたのですか。まあ連中にはお似合いですが」
「レイドリック派の生き残り・・・・・・。それにしても何故トラキアはいつもその様な質の悪い者達を使うのだろう」
「それがトラバント王なのですよ。目的の為ならば悪魔とも手を結びどの様な卑劣な謀略も厭わない、ユグドラルに巣食うニーズヘッグそのものです」
フレッドが吐き捨てる様に言った。普段の温厚で寡黙な彼からは想像出来ない姿だった。
「まあ奸賊共を成敗する良い機会です。ここはトラキア軍と山賊共を倒す作戦を執りましょう」
グレイドが言った。
「けどどうやって?」
「はい、それは・・・・・・」
セリスの問いにグレイドは卓の上の二つの城と双方の駒をそれぞれ棒で指しながら自らの策を述べはじめた。セリスはそれに頷きグレイドの策を採用した。諸将はそれぞれの持ち場に散った。
翌日の昼頃解放軍はミーズへ向けて進軍を開始した。それはすぐにトラキア側にも伝わった。
すぐにシューターに兵が配され槍が置かれた。竜騎士が出撃し伏兵達が息を潜める。
しかし解放軍は前に進もうとしなかった。昼が過ぎ日は傾きはじめている。
「陽動か!?」
だが兵が動いた形跡は無い。とりあえず様子を見る事にした。
夜が来た。それでも解放軍は動かない。トラキア軍は解放軍が今まで分進合撃や釣り出し戦法等で勝利を収めている事もあり警戒を怠らなかった。朝になった。
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