第三十八話 ミッドウェー本島ヲ攻略セヨ(その2)
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え、紀伊が彼方にいる一隻の深海棲艦を指さした。
「あれを倒せば終わります!」
「なぜ、そう思う?」
「根拠はありません。でも、私にはなぜかそう感じるんです!」
普段ならみんな信じられないと言ったかもしれない。だが、この状況下にあっては、紀伊の言葉は不思議と皆を納得させる力を持っていた。
「紀伊さん。」
赤城が進み出た。
「あなたが来てから、変わりました。劣勢だった戦況は徐々に変わり、対立しがちだった艦種を越えて共同体としてここまでやってこれた。すべてあなたのおかげです。そして・・・・。」
赤城が紀伊に微笑んだ。
「あなたは私を信じてくれました。今度は私があなたを信じる番です。」
赤城は一転表情を引き締め、凛とした顔になった。
「命を賭けて、私はあなたを最後まで支えます。」
「赤城さん・・・。」
つぶやく紀伊の耳に、フッ、という笑いを含んだ吐息が漏れてきた。
「やられたな。最後の最後まで言われるとは、秘書官失格だ。お前にはかなわない。」
長門が紀伊を温かく見ていた。武蔵も、皆も。
「いいだろう。全力をもって、あの深海棲艦を倒す。それに賭けてみよう。」
「長門さん・・・・皆さん・・・・。」
『オシャベリハ終ワリカ。』
エコーを含んだ声が響いた。皆が振り向くと、ミッドウェー本島に一隻だけ佇んでいる深海棲艦がこっちを見ていた。血の様に赤い目をし、白い血の気のない頬、長い黒い髪を水面にまで垂らし、その背後には強力なケルベロスのような三頭獣のようなものと、深海棲艦の首から太い血管のような物でつながっている。それはドクッドクッと音を立てているかのように波打っていた。
三頭獣は5連装砲搭を両肩に備え、さらに長大な飛行甲板のようなものと、無数の魚雷発射管のようなものを備えている。
沖ノ島棲姫と同様その顔は人間らしい美しい顔だったが、頬、額等になにか文様のようなものがうかんでいる。
『降伏シ、我ニヒザマズクカ、降伏ヲ拒否シ、我ラノ砲火ヲ受ケルカ、決マッタカ?』
「あぁ、決まったさ。」
長門が凛と胸を張った。
「我々は貴様などに屈しはしない!!」
『愚カナ艦娘タチヨ。』
深海棲艦は嘲笑うように声を上げた。
『貴様ラサエイナケレバ、我々ハ生マレナカッタ。貴様ラサエイナケレバ、人類ハ生存デキタトイウノニ・・・・。』
「どういうこと・・・??」
榛名がぞっとしたようにつぶやいた。すべての元凶は深海棲艦だと思っていた。ところが、深海棲艦たちは、まるで艦娘たちこそが元凶だと言っている。
「耳を貸すな!!全艦隊、突撃!!」
長門が叫んだ時だ、深海棲艦が腕を振った。その直後、金属音が鳴り響き、艦娘たちはそのあまりの音に耳をふさいだ。
「敵が、来る!!」
大和が叫んだ。彼女と陸奥たちは包囲直前に走りこんで何とか合流することが
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