我が鎮守府のバレンタイン事情〜オムニバス編〜
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、俺の対面に腰掛けて、何をするでもなくただジッとこちらを眺めている。どっかの悪戯好きな駆逐艦どものように仕事の邪魔をしないだけマシだが、何だかこうジッと見つめられていると……居心地が悪い。
「昨日の演習での戦績と……資材消費に、装備に関する意見具申か。こいつぁ工廠直通だな、大淀頼むわ」
「了解です」
特に何の反応もなく、大淀は書類を受け取って明石の下へと向かった。これで執務室には俺と加賀の2人きり。何か目的があるならここでモーションをかけてくる筈だが……。
「………………提督」
「あ?」
「失礼します」
「ん……おぅ」
そう言って立ち上がる加賀。スタスタと歩く音が響く。このまま退室するのか?何か意図があるのかと思ったが……なんて考えていたら、俺の右隣のソファが沈み込む感覚と、右肩にかかる重量感。加賀が隣に腰掛けてしなだれかかって来ている。押し付けられている柔らかな身体と確かな2つの膨らみの存在を、右腕が感じ取ってくる。ウブな坊やなら狼狽えるのかもしれんが、この位のスキンシップはウチじゃあ日常茶飯事。そんな事で心を乱される程、俺もヤワじゃない。
『ん?この匂い……』
いつもの加賀の体臭と違う香りが漂う。チョコレートの甘い香りに混じり、ふわりと香る匂いがある。
「珍しいな、お前が香水付けるなんて」
「そうですか?チョコの匂いは嗅ぎ付けると思っていましたが……流石は提督」
「普段は汗とシャンプーの匂い位しかしないからな」
普段は香水どころか化粧もあまりしない加賀が、香水を付けている。珍しい事もあったものだと思いながら、書類にペンを走らせる。
「……提督」
「何だ?」
「香水の匂い、お嫌でしたか?」
「いや、珍しいので面喰らっただけだ」
恐らく、加賀の顔は今不安げな顔をしているだろう。だが、俺に『女』として意識して欲しいと願ってする努力のいじらしさを誰が嫌がろうか。
「それがどうかしたか?」
「……いえ、なんでもありません」
「ふふ、今日はおかしいぞ?お前……」
そしてまた沈黙が生まれる。室内に響くのは柱時計のカチコチ言う音と、ペンを走らせるカリカリという音だけだ。加賀とはそれ以上発展する事もなくーーー強いて言うなら加賀が頭を肩に預けてきた位だが、大きな変化はなく、満足したのか熊野と大淀が戻ってくる前に加賀は去っていった。恐らくは尻に敷いていたのだろう、少し柔らかくなったチョコの包みを置いて。
「……まさかあれ、『襲ってくれ』ってアピールだったのか?いや、流石にねぇか」
コーヒーを淹れ、溶けかけのチョコをかじりながら、俺はそう一人で吐き出した。
〜???の場合〜
また繰り返しにな
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