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提督はBarにいる。
我が鎮守府のバレンタイン事情〜オムニバス編〜
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の秘書艦である熊野から引き継ぎを受けた直後にやって来た秋津洲も、そんな一人だ。水上機母艦に分類されている彼女だが、その艤装は専用機と化している二式大艇を整備する為に戦闘艦というよりも工作艦に近い。航空機への造詣も深い為、航空偵察任務以外の時には明石、夕張とともに工廠に詰める技術スタッフとして励んでもらっている。

「おぅどうした?また新しい工具の申請か?」

「もー、違うかも!今日はバレンタインデーだからチョコ作って来たかも!」

「おいおい、かもじゃあ作って来たのかわかんねぇぞ?」

「“かも”は口癖だからしょうがないの〜!チョコはちゃんと作って来たの!」

 からかい半分でそうは言ったが、その手にトレイが載っているのを見た時点で何となくは解っていた。

「じゃ〜ん!大艇ちゃんを象って作ってみましたー!」

「おぉ、中々良くできてるじゃねぇか」

 トレイの上には大艇ちゃんーー秋津洲が装備として使用する1/1サイズの二式大艇のスケールモデルのチョコが鎮座していた。プロペラや機銃まで、再現度はかなり高い。

「えへへー、張り切っちゃったかも!」

 作った秋津洲は得意気だ。

「んじゃ早速食わせて貰おうかなっと」

 俺が大艇チョコを手に取り、翼を根元から折ろうとした瞬間、

「だっ、ダメええぇぇぇぇぇ!」

「あ!?何で止めるんだよ秋津洲!」

「だってだって!翼は飛行機の命かも!そこをへし折って食べるなんて鬼畜かも!」

 その後もどこから食べようとしても何かしらと邪魔をされ、結局味見すら出来なかった。

「……どうすんだこれ」

「んーと、冷凍庫に入れて観賞用にして欲しいかも?」

「商売の邪魔だ、溶かしてチョコフォンデュだな」

「て、提督の鬼〜!」

 食べられん食品に意味なんざねぇだろうが、ったく。





〜加賀の場合〜

 あまり感情を露にするタイプではなかった筈のオンナが、いきなり積極的になった。そんな劇的な変化が起きたら、まず何かを疑うべきだろう。




「うし、こっちの書類はこれでOK、こっちは……あ?主計課の書類混じってんぞ。おい熊野、これ届けてきてくれ」

「承りましてよ」

 今日の日替わり秘書艦である熊野が書類を持って退室する。執務室の中には俺と大淀の2人きりのハズだった……いつもなら。
 

「……で?何か用か、加賀」

「いえ、特には。提督の仕事ぶりを眺めていたいだけなので」

「……あっそう」

 短いやり取りを済ませ、再び書類に目を落とす。執務机には乗り切らず、仕方なく応接セットのテーブルに書類を乗せて、ソファに腰掛けて書類をこなしていた午後3時頃。いつの間にやらやって来ていた加賀は
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