136部分:複雑なる正義その一
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複雑なる正義その一
複雑なる正義
マンスター城南門付近における戦いでトラキア軍を退け十二神の一つ神風フォルセティの継承者セティ率いるマギ団が参加しさらに戦力を増強させた解放軍は完全にマンスター地方を掌握した。そしてミーズ城近辺にまで偵察隊を送りトラキア軍に関する情報を収集していた。
ーミーズ城ー
対するトラキア軍も解放軍がミーズ城攻略に来る事は充分予想していた。アルテナを長とし連日軍議を開き守りを固めていた。
「それにしてもシアルフィ軍の動きがかなり速いですな」
マイコフが卓上に広げられた地図を見ながら言った。地図の上にはマンスターに解放軍、ミーズにトラキア軍を表わす駒がそれぞれ置かれている。
「シアルフィ軍にコノートでの戦いの直前マギ団の者と接触があったという。おそらくフリージ軍に対する完勝もマンスターへの迅速な動きもその者の先導によるものだろう」
アルテナが腕を組みながら言った。
「そしてマギ団と合流しマンスターとフィアナで我等を退けました。その数三十万、一騎当千の将と精兵ばかりです」
マンスターで彼等と剣を交えたセイメトルが言った。
「しかも十二神器のうち四つが彼等の手にありヴェルトマーの宮廷司祭サイアスとフリージの将ラインハルトも入ったようだ。破るのは容易ではないだろう」
マクロイも続いた。
「・・・・・・講和するべきか」
アルテナがその美しい眉を寄せて呟くように言った。
「殿下、今何と!?」
コルータが驚いて声をあげた。
「兵力差は圧倒的だ。それに先に侵略したのは我等だ。それに今までシアルフィ軍とは恨みつらみも無かった。講和するべきではないのか」
「・・・・・・殿下、それは出来ません」
マイコフがその首を横に振った。
「何故だ!?」
アルテナは問うた。
「我等は今までマンスターを手に入れ豊かな暮らしを手に入れる為に戦ってきたのです。他の国の者から屍に群がるグールやスペクターの様に言われましてもな。フリージが倒れた今こそそれを成し遂げる好機、それを御理解下さい」
「・・・・・・」
アルテナは沈黙する。マイコフは続けた。
「今度は帝国も国内の政情不安や各地の反乱に対する処置に追われ介入出来ません。今こそ神々が我等に与えたもうた機会なのです」
「機会・・・・・・」
だがアルテナは思った。他の者の幸福を踏み躙ろうとする者に神々が恩恵なぞ与えるものか、帝国の今の有様はその末路なのではないのか、と。だが言えなかった。それを否定出来る程アルテナは父王の考えやトラキアの民衆について知らないわけではなかった。否、よく知っていたからこそ否定出来なかった。
「お解り頂けましたか」
「うむ・・・・・・」
アルテナは力なく頷いた。
「な
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