135部分:騎士その三
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そう言って頂けるとは光栄です、将軍」
「・・・・・・ご存知でしたか」
ラインハルトは顔を少し暗くした。
「はい、ですが我々は将軍と剣を交えに来たのではありません」
「えっ!?」
「我々はトラキアからフィアナの民を護る為にこの地に来たのです。あちらを御覧下さい」
ロベルトの指差した方ではトラキアの竜騎士達が全て倒され解放軍が村人達を護る様に位置している。
「我等はレンスターの民衆を護る為にマンスターに侵攻してきたトラキアに宣戦を布告しました。それを受け私は部下を連れこの村に来たのです」
「予めトラキアとの衝突を考えこのフィアナに来ていましたね?」
ラインハルトはコノートでの戦いの日から計って解放軍の動きを読んだ。
「流石ですね、その通りです」
ロベルトは微笑んで言った。
「やはり」
ラインハルトは解放軍の見事な戦略眼に称賛の念を感じた。同時に民を思うセリスの心も知った。
(だがもう少し見たいな。果たして彼等と帝国どちらが正しいか。それからでも遅くはないだろう)
ラインハルトは考え終えた。そしてロベルトに近付いた。
「ロベルト殿」
「はい」
ラインハルトは気を落ち着けた。そして口を開いた。
「暫くの間私を貴方達シアルフィ軍と同行させて下さい。そして貴方達の本当の姿を見たいのです」
「喜んで」
ロベルトはその申し出を快諾した。かくしてラインハルトはフィアナに来た解放軍と行動を共にする事となった。そこで彼はリーフやフィンといった解放軍の将達の明朗で誠実な人柄、解放軍の規律正しい風紀と行き届いた訓練及び装備、彼等を喜んで迎える民衆の明るい笑顔といったものを見る。
後にラインハルトはこの大陸における一連の戦いの回想録を書き残した。この回想録は公正かつ的確に整然とした文章で書かれており歴史資料としても文学作品としても非常に優れたものとして評価されている。そこにこうある。
『あの時彼等の真の姿と民衆を見たいと思ったのは正に天からの声だった。あの時そう思わなかったならば今私はここにこの回想録を書いてはいなかっただろう』
確かに天からの声だったかも知れない。しかしそれを選んだのは彼自身であり彼は自身で輝きはじめたのであった。
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