その2
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』
「……救われたよ。こんな自分でも、誰かに必要とされてるんだってね。泣いて、泣いて、ひたすらにありがとうって言い続けてた。そのうちあの子も泣き出しちゃって、二人でずっと泣きわめいてたな。この時、ようやく気づいたんだ。ああ、あの子がめっちゃ好きなんだなって」
「…………」
「それからは、あの子が好きでいてくれてる自分を、好きになれるように。少しずつでいいから、頑張ろうって思ったんだ」
話が終わって、ふぅと一息つく。お冷を口に含んで喉を潤す。少し熱が入りすぎたかもしれんね。
ずっと黙って聞いてくれていた永瀬さんは、俯いて何かを考えてるみたいで反応がない。
どうしたのかと首を傾げた瞬間、意識が暗転した。
ぐらっと倒れそうだった体を支えて正面を見ると、永瀬さんの顔が。
ということは。
「戻ったね」
「……みたいだね」
うむ、切りが良いところで戻れたのでは無いのだろうか。
話す事も話したし、帰りますかね。
帰り支度のため財布を取り出したていると。
永瀬さんは、真剣な表情でこちらをまっすぐ見据えてきた。
「ねぇ、北野ん」
「……どしたの?」
「わたしも、わたしが好きになれるかな」
……永瀬さんも、自分が嫌いなのかな。
「わかんない。けど、好きになって欲しいとは思ってるよ。友達だからね」
そう、彼女と同じ『友達』だから。勝手な思いとは分かっていても、そう思ってしまうのだ。
「まー、まだ僕たち高一だし、人生は長いからね。自分を諦めるには早すぎると思うよ」
スケッチブックを取り出して、パラパラめくる。目的の絵を取り出して、永瀬さんの前に置いた。
それは部活の時、部のメンバーがみんなで騒いでいる中で、一人離れて見ていた永瀬さんの絵。みんなを眺める彼女の顔は母親が子を見守るかのようで。高校生らしからぬ大人びた微笑みは、思わず見惚れてしまうものだった。
「これって……」
「永瀬さんの素敵なところの一つ」
あげる、と伝えると、永瀬さんは呆然としつつ絵を手に取り、見続けた。
「……わたしって、こんな顔出来たんだ……」
知らなかった。
漏らした言葉は純粋な驚きで満ちていて。
飽きる事なく絵を見る彼女に、助けになれたかなと。
不安を感じながらも、永瀬さんをいつまでも待つ僕だった。
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