その1
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ちょうどいいのです。
永瀬さんはそんなやり取りを見て、いたずらが成功した子供のように笑う。
「くくく、それでね、そんなゲスーい北野んにお願いがあるんだけど」
永瀬さんはキリッと顔を引き締める。
「稲葉んのエロい絵描いてくんない?」
「おい伊織ちょっと待て」
思わず稲葉さんはつっこんだ。
「いやさ、聞いてよ稲葉ん。わたしこの前考えたんだよ。『文研新聞』に足りない物は何かってね」
「そこからどうしてアタシのエロ絵が足りないって結論になるんだ!」
「スキャンダラスな面は稲葉んが担当しているからね。後はエロティックでバイオレンスでデンジャラスな成分が必要だと感じたんだよ」
「写真週刊誌じゃないんだからそんな刺激いらないだろ。ってかスキャンダラスな面がある時点で本来の趣旨から外れてるし」
前号の『文研新聞 文化祭増刊号』にて、稲葉さんは教師二人の親密な関係をすっぱ抜いている。
そのせいでただの配布物であったはずの新聞は校内の話題の中心となり、お祭りムードに乗せられたこともあってか、最終的には後夜祭の公開告白にまで至った。
ほんと、どこからあんな情報仕入れたんだろうね。稲葉さんの情報網が怖すぎる。
「あれはお祭り限定の出血大サービスだよ。もう当分あんなネタ書くつもりないね。つーかお祭りであっても男子の性欲処理の材料なんて提供するつもりはない」
「ふふっ、稲葉んにその気はなくとも構わないのさ。なんせ生産元は北野んだからね。で、どう?」
どう? じゃなくて。そこで僕に話を振らないでくれますかね。ほら、稲葉さんがものすごい顔で俺を見てるじゃん。描く、なんて言った瞬間血の雨が降りそうなんですが。
「その……そういう事って、好きな人じゃないと妄想できないっていうか。二次元ならともかく、現実の女の子の裸を考えるのは拒絶感が半端ないっす」
「おおう、結構マジメに答えてくれたね。……というか北野ん好きな人いたの?」
…………。
「ちょっとお腹が痛くなってきたのでトイレ行ってくる」
「待とうか」
逃げようと腰を浮かした瞬間に永瀬さんにがしりと肩を掴まれた。さっきまでソファーに座っていたのに、なんという反応速度。
ああああニコニコしてるすっごいニコニコしてるよ! 完全に面白がってる!
稲葉さんもさりげなく入り口付近に陣取って逃げ場をふさいでいる。これは良くない流れですよ。
「いやー、まさか北野んに想い人がいるとはねぇ。さ、お姉さんにちょっと話してみよっか」
永野さんはそれはもう興味津々に尋ねてきた。稲葉さんもうずうず体が動いてるし、唯一味方になりそうだった八重樫くんは気づけば巻き込まれないよう遠くにいる。孤立無援……だと……?
「黙秘権を行使
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