134部分:騎士その二
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騎士その二
「申し訳ありませんが貴方の腰にある剣の鞘の紋章、拝見させて頂きました」
やはり、騎士は確信した。
「雷を身に纏わせた青き天狼、それを持つのは大陸で一つだけです」
マニフィコは続けた。
「ラインハルト将軍、貴方だけです」
観念した。今手には何も無い。例えあったとしても武器を持たぬ者に振るうわけにはいかない。だがマニフィコも家族も観念した顔で彼等を見るラインハルトを宥めるように笑った。
「御安心下さい。殺したりもシアルフィ軍に引き渡したりもしません」
「!?」
ラインハルトは意外に思った。
「貴方は今までレイドリックや盗賊達から我々を護って下さり我々の為に戦ってこられました。私達は皆貴方に深く感謝しているのです」
「・・・・・・・・・」
ラインハルトは黙ってマニフィコ達の穏やかな顔を見ながら聞いている。
「その様な御方を害したりはしません。我々でもそれ位の道理は知っています」
彼は妻にある物を出させた。
「将軍が持っておられた魔道書をお返し致します。そして村の鍛冶屋が寄進した銀の剣と村の者全員が出し合った金です。そして馬を外に一頭用意しておきました」
「私なぞにそこまで・・・・・・。かたじけない」
ラインハルトは頭を深く垂れた。
「いえ、私共は将軍に恩を少しばかりお返ししただけです。将軍がおられなければ我々は今ここにいられたかどうかもわかりません」
「・・・・・・」
ラインハルトは言葉が出なかった。その代わりに涙が滲んできた。
「さあどうぞ受け取って下さい。そして将軍の信じる道を歩んで下さい」
食事が急に塩辛くなった。身支度を整えようと髪に油を付けようにも視界が濡れ思うように出来なかった。
ラインハルトはマニフィコ達に礼を言い家を後にした。
(これからどうするか・・・・・・)
主家であるフリージ家は敗れブルーム王は倒れた。イシュトー王子もイシュタル王女も確かな所在はわからない。残忍なヒルダなぞ仕える気にもならない。他のフリージの者は今や殆どがシアルフィ軍にいる。皇帝の座すグランベルには辿り着けそうにもない。
馬に乗り村を見回した。平和で楽しく暮らす村人達がいる。
(剣を捨て彼等と共に暮らすか)
ふとそう考えた。その時だった。西の空から幾つかの影が来た。
(!?)
悪寒が背筋を走った。急いで馬を走らせる。
不幸にもその悪い予感は的中した。トラキア軍とおぼしき竜騎士達が舞い降りて来る。
残忍な笑い声を挙げながら火の点いた油壺を水車小屋に投げる。小屋は瞬く間に燃え上がる。
剣や槍を手に逃げ惑う少女や牛達を狩りを楽しむかのように追い立てる。少女をその槍が貫こうとしたその時だった。
雷球が騎士の槍を撃った。槍は粉々に吹き飛んだ。
「何ィ!?」
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