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銀河HP伝説
皇太子様への誕生祝い。
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新帝国歴三年、宇宙歴八〇一年五月十四日二十二時五十分、新たな生命の力強い息吹が病棟を包んだ。ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフが無事に男児を出産したのである。
カイザーリンがその手に男児を抱き留めていたその時刻、外には大勢の人がシャンペンの栓を開け、口々に叫びながら踊りまわっていた。
「皇帝(スポンサー兼社長)万歳ッ!」
「皇妃(副社長)万歳ッ!」
「新しい皇子(次期社長)様に万歳ッ!!」
という叫びが病棟の外にもこだまし、人々はあちこちでこの新たな命の誕生とAIL48をプロデュースする株式会社ローエングラムの次期社長の誕生を祝ったのである。その騒ぎは夜が明けても続いていた。いつもならこうした騒ぎを起こす主は憲兵隊にひっとらえられて、一夜のお説教を食らうのであるが、今回ばかりは憲兵隊も寛容な態度でいた。一つの要因として、彼らの大ボスが近くにいなかったせいだった。


ケスラーが一人難しい顔をして自邸にこもっていたのである。


彼はむつかしい、ともすれば青い顔をしながら真剣に分厚い本をめくっていた。
「まぁ、どうしたんですか?そんなに難しい顔をなさって。」
甘い声が耳元でする。ケスラーが顔を上げると、マリーカがあどけない顔を向けていた。その途端一瞬だったが、彼の頭を支配している心配事が綺麗に吹っ飛んだ。思わずデレそうになるのを懸命に押し殺して咳払いをする。
「マリーカ、良いところに来たね。実は悩み事があって君の意見を聞いてみたいと思っていたんだ。」
「どんな悩み事ですの?」
マリーカはソファーに無邪気に座り、無邪気にケスラーの横に身を寄せてきた。とたんにケスラーの全身が硬直したが、彼はそれを悟られないように懸命に努力しなくてはならなかった。何しろマリーカはかのAIL48のセンターを勤め上げ、ファン投票でも3年連続で1位を獲得したほどの美貌と破壊力のオーラの持ち主である。今もAIL48のOGとして劇場兼支配人を任されているプロデューサーの一人でもあるのだ。

実を言うとケスラーはセンターよりもはるか昔の下積み時代からマリーカのファンで有った。彼女が講演に出ると聞けば、人数がまばらの劇場の最前列で声を張り上げ、彼女が街頭で握手会に参加すると言えば、誰もいない前日から並んで順番を待つ。投票権を狙って1万枚買いあさったばかりか、部下たちにもマリーカに投票しろと働きかけたという話は有名である。その結果マリーカに投票された票はウナギ上りに上昇し、彼女は晴れのセンターを獲得したのだった。
ケスラーの頭の中はマリーカで一杯だった。

朝もマリーカ、職場に行くまでの地上車の中もマリーカ、勤務時間中もマリーカ、昼のランチを食べている時もマリーカ、午後の執務中もマリーカ、夜自邸に帰ってきた時はもちろんマリーカ。

そのマリーカが
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