皇太子様への誕生祝い。
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くださいね。」
そう言い残すと、アンネローゼ様は居間の奥に消えた。待ちきれない思いながらもケスラーは安堵してソファーに寄り掛かる。こういう時の為に準備をしておられるとはさすがは大公妃殿下であらせられる。それに比べてマリーカは――。
思わずケスラーはと息を吐いていた。確かにマリーカはかわいい。銀河一かわいい。「ロリケスラー!!」と言われようが、マリーカを手放す気など毛頭ない。だが、一方で、大公妃殿下ほどの大局的な視野とそれに伴う素晴らしい御知恵があったならば、と思わぬケスラーでもなかった。
「それにしても、遅いな。」
すぐ戻る、と言いながらもゆうに10分は立っている。ケスラーはいぶかし気に視線を居間に向けた。普段客として招待されたならばさぞ居心地のよい場所だろうが、今のケスラーにはそれを感じ取る余裕などなかった。
いかんいかん、こういう時こそ日頃の鑑賞美を養う時ではないか。あの暖炉の上の青磁の壺などは相当良いものではないか。その横にある古代王朝を忍ばせるローソク立て、細密画を入れたミニアチュール、あの写真立てなどはきめ細かな装飾が施されていて――。
ケスラーの視線がそこで凍り付いてしまった。見てはならないものを見てしまったかのように全身が総毛立ってしまった。
「お待たせいたしました。」
ケスラーは凍り付いた視線を懸命に溶かして、戻ってきた大公妃殿下に向けた。さび付いたロボットのようにぎこちなかった。
グリューネワルト大公妃殿下は、今しがたケスラーの視線をくぎ付けにした暖炉の上にあった在りし日の写真立てにあるような、あのド派手なステージ衣装を着て佇んでいた。
「ひひ、ひ、ひひひ妃殿下!!」
憲兵総監のうろたえて裏返った声が居間を満たした。
「ええ。私も実はWIL48の永久名誉センターなのです。ラインハルトときたら『ぜひ姉上には不動のセンターの位置を占めていただきたい。』などと言い続けるのです。最初は私もためらっていたのですが・・・・。」
不意にアンネローゼ様はけぶるような微笑を浮かべた。ケスラーの総身が「ザアアッ!!」と鳥肌をたてた。まずい、これはまずい!まずすぎる!!アンネローゼ様の美貌とオーラと破壊力は戦闘力に換算して優にマリーカの10倍以上はある!!
「ケスラー上級大将、あなたのお話を聞いて私も此度の誕生祝いのステージに立つ決心がつきましたわ。」
「し、失礼いたします!!」
まるで何かに追われるようにケスラーはグリューネワルト大公妃殿下の屋敷を呼び出した。臣下としてあるまじき退席の仕方だったかもしれないが、今はそんなことを気にしている余裕などなかった。こうなればやけくそだ!!心の中で叫びまくりながらケスラーは走り続け、一目散に自分の邸にすっ飛んで帰ると、
「マリーカ!!」
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