皇太子様への誕生祝い。
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とソファーに持ってこられたものを見てケスラーは絶句した。マリーカがはじけるような笑顔で思いっきり抱きしめていたのは彼女の華奢な体と同じサイズの彼女の等身大の人形だったからである。(しかもマリーカの私用服付き。)
「何って、私の人形、マリーカ・ドールですわ。きっと皇子様もこれを見てお喜びに――。」
「ならないよ。」
ケスラーは首を振った。山ほど言ってやりたいことがあるし、何よりもそれを一体ぜひ憲兵局の自分のオフィスに置きたいほどなのだが、それを言うと彼女に嫌われるので、代わりに、
「そんなものを差し上げても恐れ多くも男たち・・・もとい、皇子様のおしゃぶり代わりになるだけだよ。」
「ん〜〜・・・。あぁ!じゃ、これはどうかしら!!ちょっとお待ちになっていてくださいね!」
マリーカが叫び、身をひるがえして自分の部屋にかけていった。三度ケスラーは驚いたが、すぐに納得した。やはりマリーカはめげない。否定されてもしゅんとなることはなく、私の為に役立とうとしてくれている。そう、やはりこれはマリーカだからこそできる気遣いというわけだ。流石はマリーカ。やはりこういう人をこそ妻に――。
「マママ、マリーカ!?そ、それは何なんだい!?!?」
ドタドタドタ、ドサァッ!!とフローリングの床に降ろされたものを見てケスラーは絶句した。マリーカが満面の笑顔で得意げに披露したのは今まで披露してきたステージ衣装の山だったのである。(しかもマリーカ本人が着ていたプレミアものである。)
「何って、私の衣装ですわ。きっと皇子様もこれを着てお喜びに――。」
「ならないよ。」
ケスラーは首を振った。山ほど言ってやりたいことがあるのだが、それを言うと彼女に嫌われるので、代わりに、
「そんなものをさし上げても皇子様は召さない・・・というか、私が欲しいくらい・・・違う!!そうではなくて、皇子様は男の子なんだぞ。マリーカ。」
「えっ!?あぁ、いっけな〜い、わたしったらついうっかりしてしまって!!」
マリーカよ、いくら何でも侍女としてあるまじき大失態だろう!ケスラーは内心そう叫んでいた。
「ん〜〜・・・。あぁ!じゃ、これはどうかしら!!ちょっとお待ちになっていてくだ――。」
「いや、もういいよ。」
ケスラーはマリーカを制すると力なく立ち上がった。
「仕事の時間だからそろそろ行かないと。君も他にいいアイディアがあったらあとで教えてくれないか?」
「はぁい!いってらっしゃい!あなた!キャッ!」
一人盛り上がっているマリーカをよそに、ケスラーはにわかに老け込んだように肩を落として自邸を出ていったのである。
困ったぞ、とケスラーは悩みながら通りを歩いていた。今日の彼は非番である。マリーカにそう言ったのは、そうでもしなければ『マリーカ・オブ・マリーカ』攻勢に押しつぶされるところだ
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