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艦隊これくしょん【幻の特務艦】
第三十八話 ミッドウェー本島ヲ攻略セヨ(前編)
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その時だった。紀伊は異様な感じを受けた。
生温かく、ぬるい風があたりを吹き抜けたのだ。それを受けた艦娘たちの高揚感は一瞬で吹き飛んだ。どの艦娘も不安そうな顔を見せている。上空を見ると今まで晴れ渡っていた空が急速に黒雲に変わりつつあった。
「嵐・・・?」
紀伊は眉をひそめた。ただの黒雲ならいいのだが、何かその雲は黒く、そして赤い光を帯びているようで不気味だった。
「いや、これは普通の嵐じゃない。」
麻耶が近寄ってきた。
「これはやばいかもな、いったん撤退して様子を見ようぜ。」
「ええ――。」
そう言った時、讃岐の悲鳴が響いた。妹が怪我したかと紀伊が讃岐を見た。彼女はミッドウェー本島よりに立っていたが、その顔色は普通ではなかった。いや、もっと普通ではないものがそこにあった。
「これ、これ、なにこれ!?」
讃岐の方を見た一同は驚愕した。

海が、血の様に赤く染まっていた。それだけではない。そのミッドウェー本島正面空間には巨大な渦のようなものが巻きあがり、その中から見たこともない深海棲艦が姿を現すのが見えた。
「これ・・・・うそ・・・・・。」
讃岐が呆然となっていた。
「今までの奴らとは、桁が違うぜ・・・・・。」
麻耶がつぶやく。
「どうやら中間棲姫もただの前哨部隊に過ぎなかったようね。あれが・・・本隊なのだわ。」
紀伊がつぶやいた。
「皆さん。」
紀伊が艦娘たちを見まわした。
「ここからが正念場です。どうか気持ちを切り替えて――。」
「紀伊さん!!!」
後方にいた榛名が突然おびえたように叫んだ。日頃の彼女らしからぬ動揺に紀伊は思わずはっとなった。
「どうしましたか!?」
「あれを!!!」
 悲鳴のような声だった。榛名の指し示す彼方をみた紀伊は信じられない思いでいた。

長門、赤城たちが左右からこちらに全速力で向かってきていた。その後ろには狂ったような勝利の歓声を上げながら、殺到してくる深海棲艦の大艦隊があったのである。

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