第三十八話 ミッドウェー本島ヲ攻略セヨ(前編)
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と思っていたが、長門の言うことは一理ある。公然と大艦隊を集結させているというのは、逆に敵に策がないことを示しているのではないか。
長門は無線を取り出し、口元に当てた。
「みんな聞け!!」
長門が全艦隊に無線を開放した。隠密行動もここまでだった。ミッドウェー本島を目視できる地点に到達できた以上、派手にやってもいい。いや、むしろ派手にやらなくてはならないのだ。
「ここが正念場だ。我々が勝つか、敵が勝つか、そんな単純な話ではない。人類が生き残るか、深海棲艦がのさばるか、今日の海戦はその帰結が決まるときと心得よ!」
凛とした声は海上を圧するばかりに広がっていく。
「皇国・・・いや、違うか。」
長門はかすかに首を振って大きく息を吸った。
「そうね、私たちが背負っているのは、ヤマトだけじゃないわ。全人類の未来が、双肩にかかっているのだから。」
陸奥が静かに言った。先ほどの動揺の色は消えている。彼女も落ち着きを取り戻し、覚悟を決めたということだ。長門はそれを見て大きくうなずいた。
「陸奥、初砲撃終了後、大和と護衛艦とともに別働部隊として例の地点に急行、時期を待て。いいな?」
「わかったわ。」
赤城の作戦を遂行する上で、直前になって長門は一部修正を加えていた。別働部隊として陸奥、大和以下を割いたのだ。この部隊がどこでどう展開し同投入されるかは指揮官である長門、そして陸奥、大和のみが知ることであった。
長門は一瞬瞑目し、そして大きく叫んだ。
「全人類の興廃この一戦にあり!!各員一層奮闘努力せよ!!!」
ひときわ大きな声が海上にとどろいていき、全艦隊が高らかに叫び声を上げてそれに応えた。
「紀伊、頼む!」
長門の無線は紀伊にとんだ。それを聞き取った彼女は、
「尾張、近江、讃岐!!零式弾装填!!主砲集中全力射撃をもって、突破口を開くわ!!」
紀伊が姉妹たちに呼びかけた。3人は一斉にうなずく。そして、紀伊型空母戦艦4姉妹が横一列に展開し、主砲の仰角を上げた。
「構え!!」
凛とした声が海上を駆け抜けた。
「主砲全門全力射撃、開始!!」
紀伊が左腕を振りぬいた。
「テ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!」
轟然と砲門が火を噴き、発射された零式弾が青空を切り裂いて、とんだ。
これより少し前――。
横須賀鎮守府から続々と艦隊が出撃していく中、葵はマリアナ諸島にいる元呉鎮守府提督に向けて、極低周波電文を発していた。それは――。
『麾下ノ全戦力ヲ持ッテハワイヲ攻略セヨ。』
だった。呉鎮守府にいる空母艦娘の数は、横須賀鎮守府と同等以上である。つまり、マリアナ諸島には一大機動部隊が存在していることになり、その戦力をもってハワイを徹底的に攻略・爆撃することでミッドウェー本島攻略部隊の負担を減らそうという考えだった。
これ
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