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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
第五六話 つけるべきけじめ
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な反応を示すのかが未知数過ぎることが心配なのだ。

 ……いや、むしろユウヤの無礼な態度が逆に忠亮に火をつける可能性もある。
 水と油か、火と油か……どっちに転んでもすんなりとは行かない。

「……正直、早まったかもしれない。」
「どちらも良い大人なのですから、信じましょう。」

 両者、一抹の不安を抱えたまま項垂れるのだった。――他の選択肢も脳内に列挙するが、何れも何らかの問題を含み、確実にXFJ計画が良き方向に動くという確信を持てない。

 その中では最も無難なのがこの選択だ。

(……あれ、確か忠亮さんとブリッジスって同じ歳だったはず。)

 嫌な予感がまた一つ増えた。だが、ここは忠亮を信じて任せるしか無いだろうと結論付ける。
 すると“コンコン”―――と間を割って乾いた扉をたたく音が響く。

「どうぞ」
「失礼する。」

 イブラヒムの応答に矢次にドアが開かれ、見知った青い軍服を纏う忠亮が甲斐を伴い入室してきた。

「斑鳩大尉……!」
「そんな驚かれては聊か傷つくぞ。」

 予想外の人物の登場に目を見開く唯依に苦笑する忠亮。

「さて、貴方がイブラヒム・ドゥール中尉か……許嫁と我が国の未来、貴方のような歴戦の勇士であれば憂いが一つと消えるというものだ。よろしく頼む。」
「こちらこそ……む」

 そういって人工皮膚に覆われた機械仕掛けの右腕を差し出す。その手を取るイブラヒム―――即座にその違和感に気づく。

「ああ、義手でな。こういう時に一々面倒だ。」
「……なるほど。」

 何がなるほどなのか、勝手に得心が行ったイブラヒム―――だが、忠亮にはこの男に一言いいたいことが在った。

「時に、ドゥール中尉。貴官がロードスで部下の命と引き換えにした人間がどうしているか――――聞いておきたくはないか。」
「何……?」

 忠亮の言葉にイブラヒムの表情に緊張が走る――――。

「彼らは道を違えた、決して踏み入れてはならぬ外道へと落ちた―――部下の死に責を持つのが上官の務めならば、その結果に対し引導を渡すこともまた責務の内になるのではないだろうか。」

 真剣、まさに抜身の刀のような視線でイブラヒムを射抜く忠亮。

「かつて、(おれ)もあなたと同じ選択をした―――切り捨てるべき命を救うために部下を死に追いやった。
 その時、救った命がその死を無下にするのなら――(おれ)はこの手で引導を渡す、必ずだ。」

 ――まるで業火を纏った刀剣のような人間だ。イブラヒムはそんな感想を抱く。
 彼は生と死を尊重している、それは一つしかない命を燃焼させて疾走したが故の煌めきで掛け替えのないものだからだ。

 だから、それを無にする存在を決して許さない。何があっても許さない、
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