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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第七話 自分で行かなかったのは多分面倒とかそういう類
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本当に。もはやぜひも無いですね。優雅に謀りなどと言える時期も終わりましたか」

そう、もはやここより安息は無い。この未明を皮切りに、諏訪原市は地獄の戦争へと沈んでいくことになる。



******



「お帰りなさいませ、ハイドリヒ卿。客人は仰せの通り、無事送り返してございます」

「ご苦労」

ラインハルトを出迎える騎士。いわばここは彼の居城、玉座の間。曰く、己に相応しい己の世界と言った異空の地。豪壮かつ豪奢な殿堂で在りながらも地下墓所(カタコンペ)のように沈んでいる。およそ“生”と言えるものが徹底的に駆逐されている。

「卿らもよい退屈しのぎになったであろう。事前演習の一環としては奇態だが、客が客だ。緩んだ(たが)を締め直す役には立つ。
事によれば卿ら、身を保てずに離散するやもとおもっていたがな」

「ご冗談を」

からかうような主の言葉に、半顔を戦傷で覆った女、ザミエルは跪いたまま苦笑で応えた。

「確かに仰る通り、脅威に値するとは思いましたが、しかし」

「無茶と冗談総動員みたいな人なら、僕ら毎日見てるでしょ」

ザミエルの言葉を引き継いだのは、銀髪隻眼、単身疾駆の少年、シュライバー。跪いているが口調と礼儀に畏まった様子は無いが敬ってはいるのだろう。飼い主にじゃれ付く子犬を地でいっていた。

「あれってなんです?副首領(クラフト)の女なんでしょ?はっきり言ってワケ分かんないですね」

「それは彼女がという意味か?シュライバー」

「はい、ハイドリヒ卿。そうじゃありません。僕が分かんないのは彼の主義というか……あの子は澱みが無い。真っ白です。それを踏み潰したいとか崇めたいって言うなら珍しくないから分かるんですよ。
でもクラフトは、自分じゃ何もしないじゃないですか。全部他人任せにして。
もっとこう、男性的征服欲ってやつですかね?そういうのがあって然るべきじゃないですかね」

シュライバーはそう言ってはいるが別に彼にそういう感性は無い。自分と主以外は殺戮の対象でしかなく、先の言葉はあくまで客観的な一般論を言っていただけだ。

「おおかた、自然を愛でる感性に近いのだろうよ。或いはエデンの園といったやつかな。そうした意味で、男女の営みではないのさカールを人がましく見ようとする卿の視点は面白いが、それは徒労だな」

「つまりペット同士交配させて遊ぶやつですか?でもそれって……ああ…」

ラインハルトは微笑すると玉座に腰を下ろして呟く。

「意思は流れ出ずり(・・・・・・・・)天地創造(・・・・)、もって形を成し(・・・・・・・・)動き出す(・・・・)―――思うに、つまりそういうことなのであろうよ。蛇は楽園を追われる」

「いえいえ、そうでもありますまい。我が主が仰
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