第十五話 作戦発動 そのA
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惜しみない動き、激しい攻撃であっという間にオイゲン公子を追い込んだ。
本格的に鍛えていない悲しさ、十合も打ち合い、三分も走り回ると公子は連戦の疲れもあって、息が切れて防戦一方になった。
「ツィンマーマン生徒、無理はするな!バルトハウザー生徒は父親から手ほどきを受けている。バルトハウザー大佐は平民とはいえ突撃戦功章三度の勇者、その子とあれば負けても恥にはならん!」
幼年学校生を引率してきた教官が無理はするなと制止する。もちろん仕込みであることはいうまでもない。名誉心と羞恥心を刺激した効果は抜群だった。ふらふらになっていたオイゲン公子はたちまち勢いを取り戻し、雄叫びをあげてアレクに突進した。
だが、勢いだけで実力の差を埋められるわけもない。アレクは公子を軽くいなすと本格的な攻撃に移った。郎党はここで負けてやるのだろうがアレクは当然、手は緩めてやらない。それどころか嵩にかかって、本当に殺す気かと思うほどの激しさで──卑怯な喧嘩技も使って──攻め立てた。頭上に斧を構えて頭への一撃を防ごうとする公子の斧の柄の上から、アレクの斧が何度も叩きつけられる。公子の膝が震えだすと、斧の柄が足元を素早く払う。
「汚いぞ!!」
足元を攻められ横転しかかった公子の口から怒りの叫びがあがった。身勝手な怒りに自分の愚かさへの理解も何もかも吹き飛んだようだったが、それもわずか数秒のことだった。
「叛徒ってやつらはもっと汚いぜ、おぼっちゃん」
アレクが動じることなく言い返すと、公子ははっとした表情になって動きを止めた。
「いただきだ!」
再び、アレクが足元を払う。足払いをよけて崩れた体勢のまま振るわれた公子の戦斧をかわしたアレクが戦斧を三度振るうと、公子の戦斧は持ち主の手から跳ね飛ばされて試合場の床に転がった。
仕掛けは完了。残るは、説得だけだ。
「出番だね」
「ああ。ルーカスのな」
公子の怒りも憎悪もない、虚脱した表情に脚本を一部修正する必要を感じながら、俺はブルーノに頷いた。
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