第十五話 作戦発動 そのA
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「それまで!勝者アルフレット・フォン・グリルパルツァー生徒」
シュテーガー校長の人選が完璧だったのか、悪魔どもが居眠りしたふりをしながら何か小細工をしていたのか。
その後も番狂わせが起こることはなく、試合は順調に消化され、オフレッサー大将への挑戦権はブルーノとホルスト、俺を入れて四人までが埋まった。
残っているのは、アレクとシュラーとオイゲン公子の三人。
他の有象無象は士官学校生一人を除いて全員、潰し合って消えてくれた。最高の展開だ。これなら追加で小細工をする必要もなく、最初の予定通りに戦えばいい。
「やったな、アルフ」
「ああ、完璧なタイミングで決まったよ」
「日頃の訓練の成果だな」
俺たちがアレクとシュラーと学生らしくハイタッチして勝利を祝い、お互いの健闘を祈っている後ろで、オイゲン公子は顔を真っ赤にして唸っていた。どうやら完全に間違いに気づいたようだ。あとは負けて思い知るだけだ。
「アルフは明日からもう少し訓練の時間を増やした方がいいな。さっきの試合、最後の三十秒はぎりぎりだったよ」
「同感だ。実戦なら死ぬか捕虜になっていた」
「うがああああ」
すでに皇帝陛下のお役に立てると自負していた自分よりずっと強いと分かった俺たちの反省会を聞いていられなくなった公子が自制の限界に達して立ち上がりかけた瞬間、審判が絶妙のタイミングで公子とシュラーの試合の開始を宣言した。
「残り人数が奇数のため、機会の公平を期するべく以後の試合はトモエ式で行う。二連勝した者を勝者とする。でははじめ!」
トモエ式、古代日本において編み出された多人数での決闘の決着法、古式の表記法で書けば『巴戦』。無論最初から予定の展開だ。
公子にしてみれば突然のルール変更、顔を真っ赤にした公子が不満を言い出すのではないかと俺はちょっぴり不安だったが、そんな領域を遥かに越えて頭に血を上らせた公子は獣のような唸り声以外いかなる言葉も発せず、不安の表情を作って見守る俺たちを怒鳴りつけることもなく、執事の捧げ持った斧を受け取って試合場に上がった。
一瞬胸を撫で下ろしかけたが、公子の顔、背中を見た瞬間安心感は一瞬にして消え失せた。
誰に対してのものが主なのかは分からないが、怒気が全身から陽炎のように立ち上っている。
まずい。
公子の目に見えるほどの怒気に俺の脳裏から薔薇色の未来が消え失せ、代わって最悪の、論外の未来図が展開した。
『なるべく長引かせろよ』
この期に及んで小細工をする危険は考えないでもなかったが、俺は戦斧を構えるシュラーにアイコンタクトで予定変更を指示せずにはいられなかった。公子が怒りの威力でシュラーを一蹴し、アレクを最初の一撃で粉砕してしまいでもしたら、計画は全て崩れ去る。
『了解、アルフ』
『時間もだ
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