第三十一話 論戦その十二
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「この論戦に勝つ為には」
「はい、それでは」
「これより再びですね」
「このコーヒーを飲み英気を蘇らせたうえで」
「向かいましょう」
論戦にとだ、二人も応えてだった。
最後の論戦に挑んだ、そうして午後の全てそして夜まで論戦をしてだった。審判役の者達はここで双方を観た。
そうしてだ、彼等はひそひそと彼等の中で話をしたのだった。
「もう限界ですな」
「はい、どちらの方々もです」
「疲労の極みにあります」
「これ以上の論戦は無理です」
「場におられる王も」
玉座にいる幼い王も見るとだった。
「常に場におられてお疲れですし」
「これ以上の論戦は無理です」
「我々にしても疲れきっています」
「明日、いえ半刻でも行うことは」
「それは無理です」
「不可能です」
「それではですね」
手打ちという言葉だった。
「これ以上の論戦はしない」
「そうしましょう」
「論戦はこれで終わりです」
「それではです」
「勝敗は」
それはというと。
「問題はそれですが」
「それがどうなのか」
「どちらも一歩も引かない」
「攻められても守る、そうした状況で」
「結局お互い互角のままでしたね」
「そうでしたね」
想法のこれまでの論戦の状況と勢い、学説や弁論といった全てのものを考慮しそのうえで彼等の中で検証していく。
「では互角ですね」
「双方お互いの陣地は守りました」
「損害も同じだけです」
「戦果もまた」
戦争で得たものもというのだ。
「それではです」
「全ては同じですね」
「互角のまま終わった」
「それも完全に」
「それではこの度の論戦は」
「その結果は」
「引き分けですね」
この結論が出た、そうして。
その結論が双方に告げられた。マリーはその言葉を安堵しつつ聞き太子はいささか歯噛みしつつも顔には出さなかった。そしてマイラは。
無言のまま王の間を後にした、王に一礼して誰にも何も言わず。マリーはその姉を見送ってから心配する顔で言った。
「あの方だけは」
「はい、お一人でしたね」
「最初から最後まで」
「論戦には参加されていましたが」
当然旧教徒側でだ、その意味では太子と同じだった。
だがそれでもとだ、マリーはこの一週間の姉を思い出して言った。
「入る時も帰られる時もお一人で」
「今もでしたね」
「最後に帰られる時もでしたね」
「お一人で」
「出られましたね」
「あの方はどうしてもお一人ですね」
マリーは論戦の後で思うのだった。
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