第三十一話 論戦その八
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「日々そうされていて」
「こうした時ですら」
「夜は太子と共におられても」
「壁が」
目に見えないそれがというのだ。
「どうしてもあって」
「あの様にお一人でいられて」
「どの方からお誘いを受けても」
マイラの態度は変わらない、断り一人でいるだけだ。
それでだ、彼女達はそのマイラを心配して言うのだ。
「あのままでは」
「例えお子ができようともあの方はお一人」
「お一人だけでどれだけお辛いか」
「そのことを思うと」
侍女達にとってマイラは悪い主ではない、むしろいい主だ。身分の低い者達にも公平で気遣いが出来てしかも怒ることもない。その辺りはマリーと似ている。
それでだ、彼女達もマイラを敬愛し慕っている。しかしなのだ。
「よい方だというのに」
「あの方はどうしてああなのか」
「孤独を愛されその中におられる」
「そこから出られることはない」
「オズワルド公、司教がおられても」
側近である彼等がだ。
「しかし」
「あの方々との間にも壁があり」
「夫であられる太子とも」
「そうして常にお一人で」
「論戦にも挑まれて」
「しかも」
さらにだった。
「マリー様とも疎遠なまま」
「時折お話される時が出来ても」
「折角あの方から申し出られているのに」
「どうしてあそこまで孤独なのか」
「孤独に向かわれるのか」
「残念なこと」
「全く以て」
侍女達はそのマイラを心配して心から言うのだった、だがそれでもマイラは今も一人で王の間に入った。その彼女とは違い。
太子はオズワルド公や司教だけでなく彼の側近や学者達も連れて王の間に向かう。その時にこう言ったのだった。
「互角だな」
「はい、今の状況は」
「どうにもですね」
「互角ですね」
「これまでのところは」
「そうだな、勝ちたいところだ」
太子は己の考えを述べた。
「やはりな」
「そしてそのうえで」
「この国、周辺の旧教の勢力を挽回し」
「我等の地盤としましょう」
「その為にも」
「勝つ、勝てれば大きい」
彼等旧教徒達にとってもというのだ。
「だからな」
「はい、是非共」
「勝ちにいきましょう」
「今は引き分けていますが」
「ここから押していきましょう」
「そうする、しかし焦ってはならない」
太子は彼等にこのことを注意もした。
「絶対にだ」
「焦ればそこを付け込まれる」
「そうなるからですね」
「ここは何としてもですね」
「焦らない」
「失態は犯すべきでないですか」
「誰かが失態を犯せばだ」
それはどうしても起こるものとしてだ、太子は言うのだった。人は過ちを犯すものだと認識しているのだ。
「いいな、その時はだ」
「他の者で、ですね」
「その失態をなおす」
「そうしてい
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