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フロンティアを駆け抜けて
5VS6!ZワザVSメガシンカ(2)
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「……」

 意識が戻り、目に映ったのはやはりおくりび山の景色だった。ジェムは何か自分の立っていた足場が崩れていくような感覚に襲われながら、周りを見る。視線の先には、フロンティアに行くよりもっと前、手持ちももらっていないころの小さな自分と、師匠であり兄であり友人であるジャックがいた。ジェム自身が覚えているように、いつも通りジャックに遊んでもらっているようだ。自分の体が勝手に洗濯物を干すために動いているが、間違いなくそれはこの時のルビーがそうしているからだろう。

――あのね、今日はおとうさまがぼうえいせんをやってるところをテレビで見たの!

 幼い自分が、無邪気に父親のことをジャックに語る。ジェムの普段の楽しみはジャックに遊んでもらうことやルビーにたまに本を読んでもらうことなど色々あったが、一番は父親でありチャンピオンのバトルを見ることだった。それを見ると、ジェムは数日はずっと笑っているくらい楽しくなれた。

――ジェムは相変わらず彼が大好きだねえ。

――うん!わたしもおとうさまみたいにみんなを笑顔にするポケモンバトルが出来るようになりたい!

――僕も、それを楽しみにしてるよ。じゃあ今日は何しよっか?

――アルプス一万尺がいい!

 ジェムは元気よく掛け声を出し、ジャックと手遊びをする。時折父親のバトルの話を交え、ジャックもサファイアの昔話をする。それを自分は、いやルビーは寂しそうな目で見ている。

――私は、あんな風にあの子と遊んであげることが出来ない。

 びくりとした。この時自分はもう生まれているはずなのに、ジェムが聞いたことのないほど冷たくて悲しい声だった。

――あの人のようにポケモンバトルで楽しませてあげることも、ジャックのように色んな遊びを教えて一緒に笑ってあげることも、私には出来ない。毎日なんとか家事をこなして、寝る前に少し話をしたり本を読んであげるくらいしか出来ない。

 その声はとても苦しんでいた。ジェムの事で、苦しんでいた。ジェムが、ルビーを苦しめていた。

――お父様は、やっぱりすごいね!子供の時からお母様やいろんな人を助けて、笑わせてあげてたんだ!

 視線の先の小さなジェムは、無邪気に、残酷にサファイアだけを褒め称える。勿論ジェムは母親のルビーの事も大好きだ。でも、父親のような尊敬の対象とはまた違った。どちらかといえば、父親が助けた人間の一人であり、むしろ強い人ではないと思っていた。大きくなったら自分も母親を助けてあげたいと、無自覚に見下げていたとも言えるのかもしれない。

――ねえ、サファイア君。やっぱり、ボクは間違っていたのかな。親が子に向けるべき優しさも、子供の遊びの楽しさもわからないボクは、こんなもの求めるべきじゃなかったのかな?

 視界が
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