5VS6!ZワザVSメガシンカ(2)
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ったほうがいいんじゃないか。
それは、ジェムの父親の声だった。傍によって体を支え、優しくルビーを労わる態度は紛れもなく本物だと確信する。すると、ジェムの体が勝手に言葉を発した。
――いいんだ、不安になったときは、ここに来ると少しマシになるからね。
自分の口から出た声は、やはりというべきか母親のルビーで間違いない。さっきはルビーの子供の時の記憶だったが、今は20くらいの大人になっているようだ。
――やっぱり、怖いか?
ジェムの父親であるサファイアは、ルビーの背をさすりながら聞く。するとルビーは、自分のお腹に手をあてて自嘲した。
――情けないよね。ボク……いや、私が自分で決めて臨んだことなのにこの子が生まれた後のことが怖くて、仕方ないよ。
サファイアもルビーのお腹の方を見る。ジェムがそちらに意識をやると、ルビーのお腹は少し膨らんでいるのがわかった。
(ということは、まだ私がお母様のお腹の中にいた時の記憶?)
ジェムは一人っ子なのでそういうことになる。そうなると気になるのは、母親がジェムが生まれた後のことが怖いと言っていることだ。
――私は、サファイア君……いや、あなたにこの場所で好きだと言ってもらえてから、ようやく愛情っていうモノを信じることが出来た。私があなたを好きな気持ちも本物だって誓える。でも、自分の子供のことはどう思うのか、わからないんだ。気持ち悪くなるたびに、本当は私も両親と同じように、この子を疎んじているんじゃないかって思ってしまうんだよ。
ルビーは自分のお腹を、そこにいる自分の子供を思いつめた瞳で見つめる。そこには、ジェムの無条件に信じていた愛情は感じられず、ただ戸惑いだけがあった。
――大丈夫だ。ルビーは少し不安になってるだけで、疎んじてなんかいない。
――そうなのかな。私はあなたみたいに両親に愛されて育ったわけじゃない。私は結局、自分を愛してくれるあなたの事しか好きになれない出来損ないかもしれない。今お腹にいる子の事なんて、これっぽっちも好きじゃないんじゃないかな?
ジェムの、ルビーの瞳が潤んで視界が滲む。俯いて肩を震わせる。
(お母様は……私のこと、怖がってた?好きじゃ、なかった?)
お前は母親に愛されてなんかいない。それ言われた記憶が蘇る。誰に言われたかは思い出せないが、それはただ聞いただけの時よりもずっと信ぴょう性を持って胸に突き刺さる。
――――。
――――。
両親の声が聞こえなくなる。サファイアは、必死にルビーを励ましているようだった。ルビーは少しだけ笑ったが、やはり明るいものではなかった。信じていたものを覆されていくことに淀んだ感情がジェムの心を覆っていく。するとまた、視界が歪んで意識が消えた。
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