暁 〜小説投稿サイト〜
フロンティアを駆け抜けて
5VS6!ZワザVSメガシンカ(2)
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けど、確かに二人はここをおくりび山だと言っていた。ジェムは後継者だとも。山の景色も家も一緒というのはさすがに別の場所とは考えにくい。頭を悩ませていると、突然眩暈がして、一瞬意識が途切れる。目を開けると、ジェムは同じ部屋でおかしの袋を抱えて座っていた。襖が大きな音を立てて開かれる。ジェムはまたさっきの二人が自分を怒鳴りに来たのかと思った。

――くそがっ!!なんで俺がこんなことしなきゃなんねーんだ!!なんでてめえはぬくぬくと菓子食ってんだよ!おかしいだろうが!!ああ!?

 だが、現れたのは大人ではなくジェムより少し年上の少年だった。真っ黒な髪に、鋭い夜叉のような眼。それが自分を憎悪の目で見ている。少年はジェムの髪を無理やりつかむと、わざと引っ張るように持ち上げる。

「ぐ……」

 はっきり抵抗することも出来ず、無理やり正面に向かい合わされる。少年はジェムに向かってはっきりこう言った。

――俺はこんなところで一生を終えるつもりはねえ……ここの管理はルビー、テメエがやってろ。

「え……?」

――はっ、自分には関係ありませんってか。でもスペアはスペアらしく、俺の代用品として生きてりゃいいんだよ。じゃあな!!

 少年は、ジェムの事をはっきりルビー、つまりジェムの母親の名前で呼んだ。ジェムの体を突き飛ばし、少年は部屋から出ていく。しばらくぽかんとしていたが、何となく自分の状態がわかってきた。

「これってもしかして……お母様が、子供の時の記憶?」

 ジェムの母親であるルビーはおくりび山の後継者で、優れた才能のある兄がいなくなってしまったので自分が継ぐことになった聞いている。昔は両親に『意地悪』されていたこともあると。それはこの状況と一致する。二人の大人も、あの少年も、たまたまその時だけあんな態度を取っていたとは思えない。ずっとこんな日々を母親は過ごしていたのだろうかと思うと、すごく胸が苦しい気持ちになった。

「でも、じゃあお母様は毎日毎日こんな目にあってたの?」

 自分がそんな日々を過ごしていたらと思うだけで恐ろしかった。考えたくもない想像に支配されていると、また視界と景色が歪んでいく。


「……あれ、外に、いる?」

 一瞬意識が消え、目を覚ますと家の玄関にいた。ドアを開けているのでおくりび山の景色が見える。でも見え方に違和感があった。いつもより目線が高くなったせいだと気づくのに、数秒かかった。それを意識すると、突然お腹が痛くなったのとは違う吐き気に襲われる。

(う……なに、これ)

 やはりジェムの感じたことのない苦しみだ。それにさっきと違って今度は声に出ることはなかった。勝手に口元を抑える自分を、一人の青年が心配そうに声をかける。

――大丈夫か、ルビー?やっぱり家の中に戻
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